2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09376
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國見 昌哉 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超流動 / 超流動固体 / 励起スペクトル / 臨界速度 / 量子渦 / 動的臨界現象 |
Research Abstract |
(1)超流動固体の励起スペクトルの研究 超流動固体とは超流動性と固体としての性質の両方を持つ状態である。このような状態は1970年代の始め頃に様々な理論家によりその実現可能性が提案されていたが、近年になり固体ヘリウム4の実験や、長距離相互作用する冷却原子系のBose-Einstein凝縮の実現などにより多くの注目を集めている。このような新奇な状態の超流動性を調べるため、2次元のソフトコア相互作用するボース粒子系をGross-Pitaevskii方程式とBogoliubov方程式を用いて計算を行なった。特に、超流動の安定性を決める低エネルギーの励起状態の計算を行なった。この結果、超固体相ではu(1)対称性の自発的破れに伴うBogoliubovモードと並進対称性の自発的破れにともなうPhononモードを得た。特に、超流動を不安定化させるのはBogoliubovモードであることが明らかになった。また、この系にはストライプ相という1次元方向にのみ並進対称性が破れた相が存在するが、この相の励起スペクトルと存在領域を決定した。 (2)障害物ポテンシャル存在下の超流動体の励起状態 超流動状態には臨界速度が存在し、これ以上の速度では超流動状態ではいられない。臨界速度を超えると多くの場合、量子渦が発生し、超流動状態が崩壊することが理論的、実験的に知られている。しかしながら、量子渦の出現するメカニズムはまだあまりわかっていない。これを明らかにするため、Gross-Pitaevskii方程式とBogoliubov方程式を用いて、障害物と超流動流があるときの励起状態の解析を行なった。この結果、臨界速度近傍ではエネルギーギャップにスケーリング則が成り立つことを発見した。このスケーリング則の存在は動的臨界現象が起きていることを意味している。スケーリング則の存在と量子渦生成による超流動の崩壊との関係を見出すのが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
超流動固体の励起スペクトルの研究で得たスキルを用いて量子渦に関する研究を始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
超流動固体に関しては最近のドイツのグループ研究で我々の計算と量子モンテカルロ計算が定量的によい一致を示すとの報告(arXiv:1212.6934)がある。しかし、どのような物理的な理由でこのことがおきているかはまだわかっていないので、この解明を行なうのが課題である。 量子渦の研究に関しては、スケーリング則と量子渦生成の関係を明らかにすることが最重要課題である。これをMemory function formalismを用いた方法や、分岐理論、標準形理論を用いたアプローチなどさまざまな方法で研究を行なう予定である。
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