Research Abstract |
目的 本研究の目的は,海洋酸性化によって造礁サンゴからソフトコーラルへの群集シフトが起こる可能性について,現地調査と飼育実験を組み合わせて評価することにある.これまでの成果を論文にまとめ,Nature Climate Changeに投稿し,フィールドの結果の解釈や実験条件について,詳細で厳しい査読コメントに対して,共著者と議論しながら改稿を進め,受理・掲載された.公表はプレスリリースもされ,酸性化によるサンゴ礁生態系群集シフトの例として広く報道されるなど,社会的にも大きなインパクトを与えた.さらなる議論のために,硫黄鳥島における野外調査と瀬底における飼育実験を行った.まずは硫黄鳥島における酸性化は,生物自身による代謝活動の影響を差し引くとどれほど酸性化が起こっているのか,また,硫黄鳥島で高密度の群集をなしているソフトコーラルはCO2上昇により光合成が活性化されているか,という2点を検証するために,硫黄鳥島におけるpH・溶存酸素(DO)の変化の解析を行った.結果,昼については計算上では火山活動によるCO2ガスの影響だけでは1,000μatumにまでが上昇するはずのところ,生物代謝を入れた状態ではpCO2が600μatmまで減少し,逆に,夜については火山活動によるCO2ガスの影響だけでは1,000μatm程度であるが,ソフトコーラル群集の呼吸により実際には2,000μatmまで上昇することが分かった.また,計算されたとpCO2とソフトコーラル群集の光合成速度の関係から,CO2上昇により光合成速度も上昇することが認められた.飼育実験においては群体レベルでみていたことを,野外の群集レベルでも整合性を確かめることが出来た. また,飼育実験においては,普通のpCO2環境のソフトコーラルでも同様の反応を示すか,という疑問点を検証するために,普通のpCO2環境である沖縄県瀬底島における造礁サンゴとウミキノコの比較を行い20分間という短い時間で呼吸量の変化量を測定することに成功した.石灰化量については,炭酸系の方程式を用いて解析中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
成果を論文にまとめ,Nature Climate Changeに投稿し,フィールドの結果の解釈や実験条件について,詳細で厳しい査読コメントに対して,共著者とも議論しながら改稿を進め,ついに受理・掲載された.公表はプレスリリースもされ,酸性化によるサンゴ礁生態系群集シフトの例として広く報道されるなど,社会的にも大きなインパクトを与えた
|
Strategy for Future Research Activity |
硫黄鳥島の観測から,計算されたとpCO2とソフトコーラル群集の光合成速度の関係から,CO2上昇により光合成速度も上昇することが認められた.飼育実験においては群体レベルでみていたことを,野外の群集レベルでも整合性を確かめることが出来た.この成果は論文化に向けまとめている.また,飼育実験についてはpHとDO電極によるリアルタイムでの測定を取り入れた.このことで20分間という短い時間で呼吸量の変化量を測定することに成功した.石灰化量については,炭酸系の方程式を用いて解析中である.2013年度は採水の回しかたに工夫をし,さらに効率よく代謝量を測る実験を試みる.
|