2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09397
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 夏子 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ボーズ・アインシュタイン凝縮 / 光物性 / BEC-BCSクロスオーバー / 超伝導 / 半導体物性 / 励起子ポラリトン |
Research Abstract |
励起子ポラリトンにおけるボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)は,低温度を保持したまま高密度領域に到達すると,その位相はBCS領域へクロスオーバーすると予測されている.ポラリトンBCS領域は,従来の電荷をもつクーパー対の代わりに光で誘起された電子正孔対から構成される.現在までに報告されている研究では,励起密度の増加に伴い弱結合が起こり,系はポラリトンBECからphoton BECへ移行すると報告されている.本研究では,ポラリトンBEC-BCSクロスオーバーの特性を求め,ポンプ光の強度を変化させることで実験的にクロスオーバーを観測することを目的としている. 現在までに報告されている励起子ポラリトンBECは,BECのしきい値直上の励起密度領域において実験されてきた.これは,ポンプ光強度が増加するとポンプレーザー光によって半導体サンプルが加熱され,共振器光子および励起子のエネルギーが共にシフトし,強結合が崩壊してしまうためである.我々は,Upper polaritonの非共鳴エネルギー付近をポンプ光エネルギーとして選択した結果,強結合を保持したまま高励起領域におけるフォトルミネッセンス(PL)測定異験を行うことに成功した.データ解析の結果,これまで観測されたことのない高密度領域においてMollow tripletスペクトルを観測した. 理論解析としては,マスター方程式にLower Polariton(LP)のポンプ項を追加し,two-time correlation functionを用いてPLを厳密に算出した.その結果,高密度領域においてMollow tripletのように光子数Nに依存して広がるサイドピークが生じることを確認した.さらに,実験状況をシミュレートするために,時間依存したポンプ光を仮定してPLの算出を行い,実験結果と定性的な一致を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
励起子ポラリトンにおけるBCS領域のフォトルミネッセンス特性を,two-time correlation functionを用いて算出した.その際に用いるマスター方程式には,lower polaritonの粒子が熱浴から注入されるモデルを仮定した.その結果,Mollow tripletとして知られる光子数に依存したサイドバンドが生じた.これはキャビティ光子場と励起子の間でコヒーレントラビ振動が起こっている証拠となり,非常に重要な特性を掴めたことになる.また,実験結果との定性的な一致を示すことができたことは,予想以上の進展であるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
高励起領域においては,非常に多くのポラリトン粒子が系に存在するため,ポラリトン粒子間の相互作用の強度がフォトルミネッセンス(PL)に影響を与えると考えられる.そのため,粒子間の相互作用を推定し,新しいハミルトニアンを用いてtwo-time correlation functionをより厳密に計算することで実験結果との定量的な一致を図る. また,励起子を2準位原子モデルではなく,電子とホールのクーロン相互作用によって記述することで,PLの運動量依存性を議論し,BCS物理の本質を明らかにする.
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Research Products
(6 results)