2012 Fiscal Year Annual Research Report
固体惑星の初期分化モデル:月マグマオーシャンからの制約
Project/Area Number |
11J09425
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 理紗 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 月 / マグマオーシャン / 分化 / バルク組成 / 斜長岩質地殻 / マグマ物性 / ピストンシリンダー / 希土類元素 |
Research Abstract |
本研究では固体惑星の初期進化の統一的理解を最終目標としている。そのために、まず固体天体の初期進化を実証的に検討することができる月の観測事実から、惑星の初期組成とマグマオーシャンの冷却過程の関係を明らかにする。そして月により検証されたモデルと、実験的に決定された種々のパラメータを使い、任意のサイズ・初期組成を持つ固体天体についての初期進化をフォワードに予測する。そのために(1)月化学組成の推定、(2)高圧下でのマグマの物理的,化学的性質の決定、(3)固体天体初期分化モデルの構築、を目指している。 当該年度の研究では、(1)月化学組成の推定に対して、月サンプルの分析で得られた希土類元素パターンを用いた推定から、月の総Al203量に対して地球の1-1.4倍という強い制約が得られた(2012年日本惑星科学会など)。また(2)高圧下でのマグマの物性に対して、ピストンシリンダーを用いた高圧実験により、月マグマオーシャンを想定したマグマめ粘性はFeO量には強く依存するがNa2O量にはほとんど依存しないことがわかった。さらに(3)固体天体初期分化モデルに対して、実験で得られた結果を組み込み、初期組成・サイズを任意に与えたときの固体天体の初期進化を一貫して行うことができる分化モデルのプロトタイプを作成した。現在さらに熱進化を組み込むことを予定しており、冷却のタイムスケールや析出する結晶粒径の情報も得ることを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書での研究実施計画では、「月バルクAl203量の制約」と「マグマオーシャンの物理的・化学的性質の決定」を行う予定であった。当初の予定通り、月サンプルの分析で得られた希土類元素パターンを用いた推定により月バルクAl203量の制約を与えることができ、1年目から継続して行っているピストンシリンダーの高圧実験により、マグマの密度・粘性を決定することができたため、予定通り順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、固体惑星の初期進化の統一的理解へ向けて、(1)月化学組成の推定、(2)高圧下でのマグマ物性の決定、(3)固体天体初期分化モデルの構築、を3本柱に進めていく予定である。 ただし当初の予定に比べ、月のマグマオーシャン分化過程のモデル構築により重点を置くことを計画している。これは、ここ数年各国で次々と人工衛星による月探査が行われており、高精度で新しい観測事実が数多く発表されている。これらの観測事実を多角的に検討して、月マグマオーシャンの冷却過程をより詳細に解明することが、今後固体天体の初期進化を考える上で非常に重要になると考えているためである。
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