2011 Fiscal Year Annual Research Report
孤立気相系における核酸塩基―受容体相互作用の分子論的解明
Project/Area Number |
11J09470
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
浦島 周平 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, DC1
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Keywords | 孤立気相系 / 赤外振動分光 / 生体分子 |
Research Abstract |
本研究は、DNAやRNAを構成する要素として知られる核酸塩基が生体中の様々な代謝反応に関与することに着目し、核酸塩基とその受容体との相互作用を、孤立気相分光の立場から解明することを目的としている。しかしこのような生体分子は熱的に不安定であり、加熱によって気化することができない。そこで我々はこれまで独自のパルスレーザー脱離法を開発してきた。この手法では様々な分子を非破壊的に気化することが可能である一方で、その脱離量は安定せず、測定された赤外振動スペクトルには大きなノイズが現れていた。この「脱離量のふらつき」によるノイズは特に高次のクラスター(核酸塩基-受容体複合クラスター)で顕著になると考えられる。そこで本年度は、新たに測定ソフトウェアを開発し、独自の信号処理手法を導入した。その結果、赤外振動スペクトルのSN比が飛躍的に改善し、個々のピークの強度や、水素結合等によりブロード化したピークの形状を正確に測定することが可能となった。 また我々は二光子共鳴イオン化法を用いて、質量選択的に紫外スペクトルを測定している。従って質量が同じで構造が異なる異性体が複数存在している場合、紫外スペクトルにはそれらが同時に観測される。通常、これらの異性体は紫外-紫外二重共鳴分光法により分離されるが、この手法は異性体ごとに電子スペクトルが異なることを利用しているため、シャープな電子スペクトルを示す系にしか適用できない。しかし今後目指しているペプチド-核酸複合体などのフレキシブルな構造を持つ系では電子スペクトルが複雑化すると予想され、紫外吸収がブロードな異性体を分離しなければならない。そこで本年度はIR-purified UV spectroscopyを開発し、ブロードな紫外吸収を持つ尿酸一水和物の異性体分離を通してその測定手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は赤外振動スペクトルに現れるノイズを軽減させることを目的に研究を行い、これに成功した。これは当初予定されていた1年次の研究と異なっているが、本年度の成果により、当初1-3年次に予定していた測定が極めて簡便化された。以上の理由により、研究機関内に当初予定の研究を完遂できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた1-3年次の研究計画に沿って、ペプチド分子及び核酸塩基との複合体クラスターの構造決定を行う。このうち、ペプチド単量体及びその水和クラスターの赤外振動スペクトルは比較的容易に測定可能であり、これ以上の手法改良を必要としないと予想される。しかし複合体クラスターの安定気相生成は困難であるため、今後は本年に確立した測定手法がこのような系にどの程度有効であるかを検証しながら研究を進める。更なる手法改良が必要な場合は、分子を気化させる条件の検討、また化学修飾による水素結合サイトのコントロールにより、目的の大クラスターを生成する。
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Research Products
(6 results)