2012 Fiscal Year Annual Research Report
孤立気相系における核酸塩基-受容体相互作用の分子論的解明
Project/Area Number |
11J09470
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
浦島 周平 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 孤立気相系 / 赤外振動分光 / 遷移双極子モーメント / 偏光 |
Research Abstract |
【概要】当該年度は、通常の赤外分光法では解析の困難な、振動数の近接したピークを帰属するための新たな赤外分光法の開発を行った。この手法により、従来の赤外振動スペクトルからは得ることが困難だった、遷移双極子モーメントの向きに関する情報が実験的に得られると期待される。特に当該年度は、簡単な分子であるアニリンを用いて、理論と実験の両面からこの手法の妥当性と有用性を検討した。 【手法】従来の振動スペクトル測定手法である、赤外-紫外二重共鳴分光法を基本とする。この手法ではまず、紫外レーザーを分子の電子励起に共鳴させ、レーザー誘起蛍光(LIF)や二光子共鳴イオン化(R2PI)シグナルを観測する。さらに、紫外レーザーよりもごくわずかに早いタイミングで赤外レーザーを照射し、その波数を掃引する。これにより、赤外光が分子の振動準位に共鳴した時に振動励起が生じ、基底状態のpopulationが減少する。このpopulationの減少をLIFまたはR2PI信号の減衰(depletion)として観測するのが従来の赤外一紫外二重共鳴分光法である。 本手法では、用いる二つのレーザーの偏光に着目する。すると、振動励起も電子励起もその遷移双極子モーメントが偏光と平行になった分子が優先的に励起されるため、二つのレーザーの偏光を回転させると、古典的には二つの遷移双極子モーメントのなす角に応じてdepletion強度が変化する。 【結果】アニリンを用いて検証した結果、アミノ基の反対称伸縮振動と対称伸縮振動で異なる偏光依存性が確認された。また理論計算と比較したところ、反対称伸縮振動については極めて良い一致を示した。 以上の成果により、当該年度に着想した分光法の妥当性が実証された。これにより、昨年度の時点では必要と考えていた、振動モードや異性体の帰属のための化学修飾の導入が不要になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在はペプチドの構造解析に着手した段階であり、昨年度までに構造決定が完了している予定であった。 しかし、昨年度は新規分光法の開発により、赤外スペクトルから得られる情報を飛躍的に豊かにすることに成功した。この成果により、これまで区別困難だった異性体の構造をスマートに決定できるようになる。現在、この手法の生体分子の構造解析への応用に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度新たに開発した分光手法の有用性を広く世界にアピールするべく、ペプチドにこだわらず様々な生体分子へと応用を試みる。また、現在のところこの新規分光法により得られた結果の理論的完全再現ができていない。そこで国内外の研究者とさらなる議論を行い、理論の完全な整備を目指す。ただし本手法の整備と応用にはある程度の期間が必要となるため、並行して既存の手法を用いたペプチドの構造解析を行う。既存手法によるペプチドの構造解析が困難である場合、新手法の理論整備が完了し次第、これを応用してあいまいさのない完全な構造決定を目指す。
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Research Products
(6 results)