2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09475
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池本 晃喜 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細孔性結晶 / 単結晶X線構造解析 / パラジウム錯体 / 酸化芳香族ブロモ化 |
Research Abstract |
細孔性ネットワーク錯体は結晶であるにもかかわらず、その細孔内は分子が移動性や反応性を有する擬溶液的環境であるという特長を有するため、細孔性ネットワーク錯体内での反応が近年非常に大きな注目を集めている。しかしながら、最先端の研究ですら"溶液系と同様の反応が結晶内でも進行した"という程度であるのが現状である。本研究では、細孔性ネットワーク錯体の分子認識能に着目し、基質の配向や反応性を錯体内で精由に制御すること、さらにはX線構造解析により反応過程を直接観測することにより、錯体細孔空間を高度に制御された反応場として展開することを目指す。, 昨年度は、パラジウム錯体の構造変化に着目した。パラジウムは今日有機合成においてなくてはならない要素となっており、数多くの反応が日々報告されている。しかしながら多くの報告例では、非常に重要な中間体にも関わらず、PdLnといったような省略形で表記されることが非常に多いことに驚かされる。今回、細孔性ネットワーク錯体結晶内にパラジウム錯体を内包し、生きたパラジウム錯体の重要な中間体の構造を観測しつつ、反応とX線構造解析を同時に行うことを考えた。 まず、パラジウム錯体の存在下、ヨウ化亜鉛とトリス(4-ピリジル)トリアジンとの錯形成により、パラジウム錯体を内包した細孔性結晶を収率3弗で得た。この細孔性結晶をN-プロモスクシンイミド(NBS)のアセトニトリル溶液に浸すことで酸化的芳香族ブロモ化反応を行い、単結晶X線構造解析によって反応を追跡した。その結果、反応過程における2つの中間体の構造を明らかにすることに成功した。そのうちの1つは、還元的脱離の前駆体として非常に重要な中間体であるものの、通常タイマー側に平衡が片寄っており、溶液中では構造を明らかにすることが困難な中間体であった。今回、そのような中間体に関しても、結晶内という精密な反応場によりそのX線構造を明らかにすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究によって、「9.研究実績の概要」で述べた研究目的はほぼ達成でき、結晶という制御された場により溶液では捉えることの困難な化学種のX線構造も明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、細孔性結晶内にパラジウム錯体を内包することに成功したことから、この結晶をカップリング反応触媒、C-H結合活性化反応など実用的な反応へと応用、展開する。既にパラジウム錯体を如何に結晶内に内包するjかという最も大きな障害はクリアしていることから、多くの反応系に適用して行くにあたり問題点はないと考えている。
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Research Products
(2 results)