2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09477
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
山口 誠二 中部大学, 生命健康科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | Ti-Zr-Ta-Nb系合金 / アパタイト形成能 / 擬似体液 / チタン酸カルシウム |
Research Abstract |
Ti-Zr-Ta-Nb系合金は生体為害性の無い元素からなり、比較的高い機械的強度及び低い弾性率を示すので整形外科や歯科のインプラント材料として有用である。これらに高い骨結合能と骨形成能を付与できれば、早期の骨結合により患者の社会復帰を早め、長期に亘り安定した治療効果を期待できる。骨結合能は擬似体液中でのアパタイト形成を調べることにより予測できる。申請者らの従来の研究で、Ti-15Zr-4Nb-4Ta合金にNaOH処理を施すと層状構造を有するチタン酸水素ナトリウムが形成され、これに含まれるNa^+イオンが後のHClあるいはCaCl_2処理によりH_3O^+あるいはCa^<2+>イオンに容易に置換されることが明らかになった。しかし、これらの処理に加熱処理や温水処理を組み合わせると同合金に低いアパタイト形成能しか付与できない。 そこで、本年度の研究は、同合金や他のTi-Zr-Nb-Ta系合金に高いアパタイト形成能を付与できる化学処理及び加熱処理条件を明らかにすることを目的とした。 Ti-15Zr-4Nb-4Ta及びTi-36Nb-2Ta-3Zr-0.30合金にNaOH及びCaCl_2処理を施した後、様々な温度で加熱処理を施し、これを温水処理に付した。得られた試料の表面層の組成、構造、形態をエネルギー分散型X線分光装置、X線回折装置、電子顕微鏡などを用いて分析・観察した。また、処理後の試料を擬似体液に浸漬し、アパタイト形成能を調べた。その結果、いずれの合金も加熱処理温度によりアパタイト形成能を大きく変化させ、700℃のときCaTi_2O_5を多く形成して高いアパタイト形成能を示すことがわかった。そのアパタイト形成能はチタン合金を高温多湿下に長期間おいた後にも安定であった。京都大学と共同で行った動物実験によると、同処理を施したTi-Zr-Nb-Ta系合金は、同処理を施したTi金属と同程度に強固に生体骨と結合した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は本年度の研究目的であるTi-Zr-Ta-Nb系合金にTi金属と同等のアパタイト形成能を付与できる化学処理及び加熱処理条件を明らかにすることを達成した。さらに、同処理を施した合金が生体内で骨と強固に結合することも確認し、次年度の課題である同処理を改良して骨形成を促進するMgイオンなどを導入する研究にもすでに着手している。これらより、研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で明らかになった化学処理及び加熱処理条件を改良して、Ti-Zr-Ta-Nb系合金の表面層に骨形成を促進するZn、Mg、Srなど種々のイオンを導入することを試みる。各種イオンの導入量の限界及び表面層内における分布を明らかにする。処理後の基板を擬似体液に浸漬し、アパタイト形成能を評価する。また、各種イオンの体液環境下での溶出挙動を明らかにする。アパタイト形成能を示し、かつ導入イオンを適当量溶出する基板について、細胞培養試験、抗菌性試験などを行う。これにより、生体活性と共に骨形成促進、抗菌性などの他の機能を同時に付与できる化学処理条件を明らかにする。
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