2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09477
|
Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
山口 誠二 中部大学, 生命健康科学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | Ti-Zr-Ta-Nb系合金 / アパタイト形成能 / 擬似体液 / チタン酸カルシウム |
Research Abstract |
Ti-Zr-Ta-Nb系合金は生体為害性を示さない元素からなり、比較的高い機械的強度及び低い弾性率を示すので整形外科や歯科のインプラント材料として有用である。これらに高い骨結合能と骨形成促進能を付与できれば、早期の骨結合により患者の社会復帰を早め、長期に亘り安定した治療効果を期待できる。骨結合能は擬似体液中でのアパタイト形成を調べることにより予測できる。申請者らは、昨年度の研究で、Ti-15Zr-4Nb-4Ta及びTi-36Nb-2Ta-3Zr-0.30合金にNaOH及びCaCl_2処理を施した後、様々な温度で加熱処理を施し、これを温水処理に付すと、いずれの合金もアパタイト形成能を示し、加熱処理温度が700℃のときCaTi_2O_5を多く形成して高いアパタイト形成能を示すことを明らかにした。もし、同合金が体内で骨形成を促進するイオンを溶出すれば、周囲の骨がより早期に合金表面まで達すると期待される。このとき、合金表面にアパタイトが形成されていれば、合金と骨とがアパタイト層を介して強固に結合すると期待される。 そこで、本年度の研究は、同合金に高いアパタイト形成能と共に、骨形成イオン徐放能を与える化学処理及び加熱処理条件を明らかにすることを目的とした。 Ti金属及びTi-15Zr4Nb-4Ta合金をNaOH水溶液に浸漬し、次いでCaイオンとMgあるいはSr,Zn,Li,Gaの骨形成イオンを含む混合溶液に浸漬した。これを加熱処理し、続いて上記の骨形成イオンを含む水溶液に浸漬した。 その結果、処理後のTi金属の表面層には1.5~3.3原子%のCaイオンと共に0.4~1.7原子%の骨形成イオンが導入され、合金の表面層には1.9原子%のCaイオンと共に0.6原子%のMgイオンが導入された。処理後のTi金属及び合金はリン酸緩衝液中に7日間で0.03~0.9ppmの骨形成イオン及び0.08ppmのMgイオンを徐放し、擬似体液中で3日以内にアパタイトを形成することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は本年度の研究目的であるTi-Zr-Ta-Nb系合金にアパタイト形成能を付与すると共に骨形成イオンを導入できる化学処理及び加熱処理条件を明らかにすることを達成した。さらに、同処理を施した合金を用いた細胞実験にもすでに着手している。これらより、研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度で明らかになった化学処理及び加熱処理条件によりアパタイト形成能を示し、かつMg、Srなど種々の骨形成イオンを様々な濃度で溶出するTi-Zr-Ta-Nb系合金の細胞培養試験用の試料を作製する。これらの試料の上でヒト骨肉腫細胞(MG63)やラット頭蓋冠由来骨芽細胞(MC3T3-E1)を培養することにより、溶出する骨形成イオンの種類及び濃度が細胞の分化、増殖に及ぼす影響を調べる。これにより、アパタイト形成能を示し、かつ骨形成を効果的に促進できる化学処理及び加熱処理条件を明らかにする。
|