2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤根 妃奈 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | トリブチルスズ / 腹腔内投与試験 / 二次元電気泳動 |
Research Abstract |
本年度の研究では、ヒラメを対象に、トリブチルスズ(TBT)の体内動態と各組織におけるタンパク質の発現変動に及ぼす影響を調べることを目的として、TBTC1の腹腔内投与試験を行った。養殖のヒラメ24尾を購入し、0、500および2,000μgTBT/kg体重を6尾ずつに腹腔内投与した。2日および3日後にそれぞれ3尾ずつから血液および肝臓を採取した。また対照区6尾についても0日目に同様に試料採取した。試料中のTBT濃度をGC/MSを用いて測定した結果、TBTは血漿中に、2000μg/kg体重投与区2日目で肝臓に比べて36倍、3日目では10倍の濃度で検出された。このように肝臓に比べて血漿中にTBTが検出されることはこれまでの報告と一致する。また、TBTの一部は分解され、ジブチルスズ(DBT)として肝臓に蓄積していた。さらに、各試料に含まれるタンパク質を二次元電気泳動により分析した結果、血漿および肝臓サンプルで約270および320個のタンパク質スポットが検出された。血漿においては、2日目の両TBT投与区でコントロール区に比べて35個のスポットが有意に発現変動していた。3日目では発現変動したスポットの数は減少した。また2000μgTBT投与区においては、コントロール区に見られない約50個のスポットが確認された。N末端アミノ酸配列分析の結果、有意に発現変動が見られたスポットには、骨の形成阻害に関わるカテプシンLや脂質の輸送、蓄積に関わる14kDaアポリポタンパク質が含まれ、これらはTBTの毒性と蓄積に関わるものと考えられた。一方、肝臓においては、2日目では8個、3日目では25個のスポットがTBT投与区で有意に発現変動し、TBT投与区で新たに約10個のスポットを確認した。現在、引き続き解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定通りTBTの腹腔内投与試験を行い、血漿、体表粘液および肝臓などその他の期間を採取した。GC/MS法によりTBT濃度を分析し、血漿、体表粘液、肝臓サンプルにおけるタンパク質の発現変動を二次元電気泳動により調べたが、解析に想像以上の時間がかかり、血漿と肝臓のみの解析にとどまった。また、体表粘液の二次元電気泳動に問題があり、今後、更なる条件検討が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
体表粘液の二次元電気泳動の条件検討を行い、解析できるようにする。また、その他の環境毒物の腹腔内投与試験を行い、同様に血液および体表粘液中の各タンパク質の発現変動を二次元電気泳動によって解析し、投与した毒物の濃度をGCまたはLC/MS法によって分析する。これにより、体表粘液中のタンパク質の発現変動と物質の排出率を解析し、物質と結合性のあるタンパク質が排出に関与している可能性を探る。また、肝臓などその他の器官については投与した毒物の蓄積傾向を調べ、毒物の体表粘液への排出と体内各組織への蓄積の関係を解析する。そして、血液と体表粘液に共通して存在するタンパク質のうち、特に血液で発現量が減少している、または体表粘液で発現量が増加しているタンパク質スポットを、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィーなどの方法により単離、精製する。
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Research Products
(5 results)