2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤根 妃奈 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | トリブチルスズ / 体内動態 / リアルタイムPCR / ペルフルオロオクタンスルホン酸 |
Research Abstract |
本研究は、魚類が持つ体表粘液を介した毒物(自然毒、環境汚染物質および抗生物質)の排出機構を結合タンパク質との関係から解明することを目的とする。本年度の研究では昨年度に引き続き、ヒラメにおけるトリブチルスズ(TBT)の体内動態と各組織におけるタンパク質の発現変動に及ぼす影響を調べた。TBTおよびその代謝産物であるジブチルスズ(DBT)の濃度を測定した結果、低濃度および高濃度投与区ともTBTの代謝が飽和状態にあり、各代謝組織を通過したTBTの大部分が未分解のまま血液中に分配されたことが分かった。低濃度区では特に肝臓で分布率が高く、代謝により血液中への分配が抑えられていた。また、肝臓を含めた組織中の代謝物の比率が低濃度区の3日目に上昇しているのに対し、高濃度区では減少傾向を示し、TBT代謝能の低下が示唆された。その原因として、肝臓においてTBTの主な代謝酵素であるP450の発現阻害が起きていることがリアルタイムPCRにより明らかとなった。さらに、酸化ストレス誘導作用、アポトーシス誘引作用についても確認された一方で、脂質代謝に関わるPPARαの発現が上昇したこと、および、TBTの脂質蓄積作用の重要な因子と予想されているPPARγに変動が見られなかったことは、これまでに報告されている他魚種や哺乳類における影響とは異なっており、さらなる研究が必要であると考えられた。さらに本年度は、新たな水域環境毒物としてペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の投与試験をヒラメに対して行い、二次元電気泳動法により血漿のプロテオーム解析を行った。現在、各タンパク質スポットの相対量を算出し解析を行っている。また、体表粘液についてはこれまでの研究で二次元電気泳動によるプロテオーム解析が困難であったことから、SDS-PAGEとLC-MS/MSを併用して解析することを現在検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定通りTBTの腹腔内投与試験からヒラメにおけるTBTの体内動態とタンパク質の発現変動に与える影響を調べ、肝臓におけるTBT代謝能の低下にTBTによる薬物代謝酵素の発現抑制、酸化ストレス、アポトーシス誘引などが関わることを明らかにした。また水域環境毒物としてPFOSのヒラメに対する腹腔内投与試験を実施し、血漿のプロテオーム解析を二次元電気泳動により行い、解析を行っている。しかし、本度中に予定していたPFOSの体内動態の解析および体表粘液の二次元電気泳動については現在準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、PFOSの体内濃度をLC-MS/MSを用いて測定し、血漿、体表粘液、および各組織への蓄積傾向を調べる。 また、血漿の二次元電気泳動の解析を完了する。体表粘液についてはこれまでの研究で二次元電気泳動によるプロテオーム解析が非常に困難であったことから、SDS-PAGEとLC-MSIMSを併用して解析を行う予定である。その後、血液と体表粘液に共通して存在するタンパク質のうち、特に血液で発現量が減少している、または体表粘液で発現量が増加しているタンパク質スポットを、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィーなどの方法により単離、精製する。また、特に肝臓と上皮組織(皮膚)についてTBTおよびPFOSの影響をプロテオームおよびリアルタイムPCR解析により明らかにし、環境毒物の排出に関わるタンパク質を同定する予定である。
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Research Products
(1 results)