2012 Fiscal Year Annual Research Report
酸化亜鉛・窒化アルミニウムを用いたハイブリッド深紫外発光素子の開発
Project/Area Number |
11J09592
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 耕平 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 固体発光素子 / 酸化亜鉛 / 窒化物半導体 / 窒化アルミニウム |
Research Abstract |
ZnO/AINヘテロ界面形成にはパルス励起堆積(PXD)法による低温薄膜成長技術が必要不可欠である。しかしながら、これまでに急峻なZnO/AINヘテロ界面を作製したこと報告例はほとんどなく、界面特性に関する知見が不足しているのが現状である。特にウルツ鉱型結晶構造を有するZnOおよびAINでは、c軸方向に分極を有するため、ZnO/AINヘテロ界面を形成した場合にはこれらの分極差に起因した界面電荷が発生し、バンドラインナップやキャリアの注入効率に影響を与えることが予想されるため、窒化物半導体薄膜の極性制御技術の確立が必要である。そこで本研究では、PXD法による極性を制御した窒化物半導体薄膜成長に取り組み、その構造・電気特性を評価することを目的とした。 本研究では初期検討として、PXD法によりサファイア基板上にGa極性およびN極性AIN・GaN薄膜の成長を行った。一般に、従来の有機金属気相成長法では表面平坦なN極性薄膜の作製は難しく、窒化物発光素子はGa極性面上に作製が行われてきたが、PXD法ではどちらの極性の薄膜についてもデバイスクオリティの薄膜が作製可能であることが分かった。特に、PXD法により作製したN極性GaN薄膜は原子レベルで平坦な表面を有しており、またN極性n型およびp型GaN薄膜は、Ga極性薄膜と比較しても遜色ない電気特性を有していることを明らかにした。以上の結果をもとにPXD法によりN極性窒化物LEDの試作を行ったところ、明瞭なダイオード特性、良好な電流注入発光を確認することができた。 本結果は、PXD法ではIII族極性およびN極性どちらの極性について窒化物発光素子の作製が可能であり、ZnO/AINヘテロ界面設計の自由度が高いことを示している。このようにPXD法は高効率ZnO/AINハイブリッド深紫外発光素子の作製手法として非常に有望である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、良好なZnO/AlNヘテロ界面の形成に必要不可欠であるパルス励起堆積法を用いて、極性を制御した窒化物発光素子の作製を実現した。本技術は従来の薄膜成長手法である有機金属気相成長法では実現困難であったが、良好なZnO/AlNヘテロ界面を実現する上で非常に重要なものである。本技術をZnO基板上に転用することで、ZnO/AlNヘテロ界面を利用した深紫外発光素子の高効率化が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
パルス励起堆積法による極性を制御したZnO/AlNヘテロ界面の作製およびその構造・電気特性の評価を通して、p型ZnOからn型AlNへのホール注入の実現を目指す。まず極性がZnO/AlNヘテロ界面のバンド構造やキャリアの分布に与える影響をデバイスシミュレーションにより解析することで、薄膜成長へのフィードバックを行う。またZnO/AlNヘテロ界面の急峻性、構成元素の相互拡散等を透過電子顕微鏡や二次イオン質量分析により評価し、結晶成長プロセスの改善を通して、ZnO/AlNヘテロ界面を利用した電流注入によう深紫外発光の実証へのアプローチを行う。
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