2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子の非断熱電子状態とレーザーによるその制御と創出の理論
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11J09633
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
花崎 浩太 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高強度レーザー場 / 非断熱動力学 / フロケー法 |
Research Abstract |
1.レーザー場中の電子の非断熱動力学の理論の構築と計算手法の開発 本研究は強いレーザー場の下の分子の電子状態の動的な振る舞いを第一原理的に解明し、またその成果を反応制御などに応用することを目的として、理論の構築及び計算コードの開発を行う。初年度においてフロケー理論を応用した非断熱動力学理論を構成し、プログラム開発に着手したのを受け、今年度はプログラムの完成と検証作業を行い、成果の学会発表と論文作成(投稿準備中)を行った。 【水素分子イオンの精密計算】理論の検証を行う為、最も単純で振る舞いがよく知られている水素分子イオンのレーザー中の動力学を本手法によって計算した。結果、従来法とのよい一致を得た上、従来法で得られなかった機構の詳細に関する有益な知見が得られた。(日本物理学会秋季大会で発表) 【フッ化リチウム分子への適用】次に、本手法の利点をより明確にするため、(外場無しの状態でも)分子固有の非断熱結合が重要になるフッ化リチウム分子のレーザー中での解離の問題に適用した。また、この計算を通じ、(1)量子化学計算を使った行列要素の計算、(2)「(1)」から構成したハミルトニアンを用いた量子波束計算による正確な動力学計算、(3)「(2)」結果と量子化学計算を組み合わせた観測量の再現という3段階の解析法を確立しつつある。成果は、近日中に然るべき学会誌に投稿する予定である。 2.半古典力学の理論 レーザーを直接扱わないが、本研究と密接に関わる、分子動力学における電子-核結合動力学の精密化という問題に関し、経路積分を使った研究員の修士課程での成果(Physical Review A誌に発表済)の精密化を試みたところ興味深い知見が得られたので、投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初今年度中の論文発表を計画していたが未達成となった。当初計画では水素分子イオンの研究成果で第一論文とする予定であったが、新奇性に乏しいとの指摘を受けた為、次のフッ化リチウム分子の計算まで含めて第一論文とすることになった。一方、計画外の進展として、半古典力学についての成果があった。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階で投稿準備中の、フッ化リチウム分子の計算及び半古典法に関する研究成果をまとめ、できる限り速やかに論文として投稿する。また、ここまでに確立した手法によって、レーザー場によって非断熱制御を制御する「動的シュタルク制御」という実験手法に関する知見が得られる見込みであり、これを通じて"制御と創出の理論"という本研究課題の達成を図る所存である。
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