2011 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属多核ヒドリド錯体によるアルカン及び二酸化炭素の活性化と新規触媒反応の開発
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11J09645
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田原 淳士 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ルテニウム / クラスター化合物 / アルカン / 二酸化炭素 / 炭素-炭素結合形成 |
Research Abstract |
以下の項目に関して成果を挙げたので報告する。 【三核錯体を用いたアルカンの活性化】 修士課程において開発した、三核錯体上における炭化水素配位子の炭素鎖不均化反応(メタセシス反応)をアルカンメタセシス反応へと応用するために、三核骨格内に2つのRu金属と1つのRh金属を有する異種金属三核錯体4を用いた反応の展開に取り組んだ。錯体4と1-ペンチンとの反応から得られるビニリデン錯体5と重オクタンとの反応を検討したところ、室温でのH/D交換反応が進行した。このことから、錯体5はアルカン分子の取り込みに対し高い活性を示すことが明らかとなった。現在は、錯体4,5を用いたアルカンメタセシス反応の開発に取り組んでいる。 【三重架橋スルフィド配位子を有する三核Ru錯体と二酸化炭素との反応】 錯体1と二酸化炭素との反応では180℃の加熱を必要とする。三核反応場の電子的・立体的チューニングを行うことで二酸化炭素との親和性に変化が生じるものと考え、三核反応場に架橋配位子を導入することを考えた。錯体1とチオフェノールとの反応から得られる三重架橋モノスルフィド錯体8と二酸化炭素との反応を検討したところ、80℃において酸素-炭素二重結合が切断され、架橋カルボニル錯体9が定量的に生成した。錯体9は配位不飽和な46電子錯体であり、外部基質との反応性が期待される。実際に錯体9は室温下1気圧の水素と反応し、架橋カルボニル-トリヒドリド錯体10へと変化する。現在は水素以外の基質(炭化水素etc.)との反応を検討し、二酸化炭素を炭素源とするカルボニル化に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」で掲げたアルカンの活性化に留まることなく、研究計画には記載していない芳香族化合物の活性化にまで自らの研究を発展させつつあり、当初の計画以上に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
アルカン分子、二酸化炭素分子の低温条件での活性化に成功しているため、今後は触媒的分子変換反応の開発に努める。また計画当初には予定していなかった芳香族化合物の活性化も視野に入れつつ、広義での「不活性炭化水素の活性化」という観点から、アレーン分子の活性化、官能基化、カップリング反応の開発に努める。
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