2012 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属多核ヒドリド錯体によるアルカン及び二酸化炭素の活性化と新規触媒反応の開発
Project/Area Number |
11J09645
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田原 淳士 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC2)
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Keywords | ルテニウム / 有機金属化学 / 錯体化学 / クラスター / ポリヒドリド配位子 / アルカン / 二酸化炭素 / 結合活性化 |
Research Abstract |
原油や石油の枯渇が深刻化する昨今、燃料や材料としての炭素資源を確保することは極めて重要な課題である。特に、石油化学基礎原料として需要のあるC_2~C_4資源や、燃料として有用なC_8~C_<10>資源を、炭素数の大きな留分や、近年開発が著しい天然ガス(炭素数が少ない)から合成することができれば、炭素資源確保の大きなブレイクスルーとなる。本研究課題では、分子内に複数の金属を持つ遷移金属複核ポリヒドリド錯体を用いて、アルカン及び二酸化炭素といった科学的に不活性な炭化水素分子を活性化し、炭素数の変化を伴う分子変換反応に取り組んできた。 本研究では、三核ルテニウムペンタヒドリド錯体{Cp^*Ru(μ-H)}3(μ_3-H)_2を用いて、炭素数5の炭化水素分子である1-ペンテン及び1-ペンチンを、炭素数2のエタン及び炭素数8のオクタンへと骨格変換させることに成功している。本反応の汎用性について検討したところ、炭素数の短い直鎖不飽和炭化水素から長鎖の炭化水素まで(C_3~C_8)用いた場合にも高選択的に炭素鎖複分解反応が進行することを明らかにした。更には、末端に置換基を持つ基質や、内部アルキンを用いた際にも同様にメタセシス反応が進行することを明らかにした。最終目標であるアルカンの分子変換にも着手し、ルテニウムとロジウムからなる異種金属三核錯体を用いて、室温での重オクタン分子のC-D結合活性化を達成した。 二酸化炭素分子に関しては、三重架橋スルフィド錯体{Cp^*Ru(μ-H)}_3(μ_3-S)を用いることで、従来よりも温和な温度条件での二酸化炭素分子のC=O二重結合切断を達成した。またエチレンとの反応から、分子内に架橋エチリデン配位子と架橋カルボニル配位子を有する三核錯体の合成に成功しており、得られた錯体の加熱反応を行うことで、二酸化炭素をC_1源としたアルコールやアルデヒド合成に応用できるものと考えられる。
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Research Products
(6 results)