2011 Fiscal Year Annual Research Report
「暗黒加速器」のX線観測と衛星用X線CCDカメラの開発で探る銀河系宇宙線起源
Project/Area Number |
11J09676
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤永 貴久 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 銀河宇宙線 / 高エネルギー宇宙物理学 / X線天文学 / X線CCDカメラ / ASTRO-H衛星 |
Research Abstract |
宇宙空間には宇宙線という陽子や電子などから構成される粒子が飛び交っている。銀河系内では最大10^<15>電子ボルトまで加速されていると考えられている。構成割合の多い陽子がどのような天体で加速され、宇宙空間を満たしているのかを解明するのが現在のトレンドである。 近年、超高エネルギー(VHE)ガンマ線観測技術が進歩し、銀河系内で新たな天体が多数発見された。 VHEガンマ線は10^<12>電子ボルトより高いエネルギーの粒子から放射されることが知られており、宇宙線加速天体である可能性が示唆される。しかし、VHEガンマ線は陽子、電子いずれからも放射され、その判別は現在のところX線観測が最も有効な手段である。陽子はX線で明るい放射過程がないため、VHEガンマ線以外のエネルギーで暗い「暗黒加速器」が見つかれば陽子加速の証拠を捉えたことになると目され、「暗黒加速器」の総数や特徴を調査すべく世界中のX線衛星で追観測が行われている。 本年度は、新たに発見されたVHEガンマ線天体のX線観測の計画・応募を行った。来年度観測予定分として「すざく」と欧州の衛星XMM-Newtonに合計3件の提案を提出し、1件は採用が決定している。また、昨年度より行ってきた「すざく」衛星で観測したVHEガンマ線天体HESS J1702-420の結果を国内外の研究者と共に投稿論文にまとめ、雑誌に掲載した。この論文は「暗黒加速器」の4例目として貴重な結果を示すことができた。さらに現在、VHEガンマ線天体HESS J1427-608の「すざく」とXMM-Newtonの観測データ解析を宮崎大学などと合同で進めている。 さらに、2014年打ち上げ予定のASTRO-H衛星にはX線CCDカメラSXI(Soft X-ray Imager)の開発も行った。SXIは視野が広く、大規模な構造をもつVHEガンマ線天体を一度の観測で捉えられる上、CCDの技術革新により低いエネルギーのX線も検出することが可能となる。本年度は設計・製造された読み出し回路の第一次試作を動作実証し、CCD素子の性能評価を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「暗黒加速器」の観測については3件観測提案を行い、1件が採択されている。また、別途すでに観測された2天体の観測データを解析しており、当初の予定を概ね達成している。 また、X線CCDカメラの開発は予定通り試作システム全体の動作実証と性能評価を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「暗黒加速器」の観測については、引き続き正体探査を進めるべく観測提案を行っていく。同時に、観測実績のある天体数が次第に増えてきたためVHEガンマ線天体の中で「暗黒加速器」がどのような特徴をもつか、系統的な調査に着手する。いずれも当初から2年目に予定していた研究内容である。 また、X線CCDカメラの開発については、CCDの性能評価および動作条件の最適化を進め、2年目に予定している非X線バックグラウンドの低減に向けた電子の応答調査を行う。
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