2011 Fiscal Year Annual Research Report
古典的Wntシグナルによるショウジョウバエ消化管の左右非対称な形態形成機構の研究
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11J09680
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
黒田 純平 東京理科大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ショウジョウバエ / Wntシグナル / 左右非対称性 / 消化管 |
Research Abstract |
私の所属する研究室では、無脊椎動物の左右非対称性形成機構を理解するために、遺伝的手法が駆使できるモデル生物であるショウジョウバエの消化管の左右非対称性に注目し、研究を行ってる。ショウジョウバエでは、初期胚の消化管に明瞭な左右非対称性が存在する。ショウジョウバエにおいては、前後軸、背腹軸の決定機構に関して先駆的な研究が行われてきたが、左右軸の研究はほとんど行われていない。私の所属する研究室のこれまでの研究によって、ショウジョウバエの左右非対称性形成には、1型ミオシンであるMyosin ID(Myo ID)や、アクチン細胞骨格が関与することが明らかにされている(Hozumi et al.,Nature,2006)。しかし、左右非対称性形成におけるこれらの因子の分子レベルの機能については不明のままである。私は、本研究によってショウジョウバエ胚消化管の中腸の左右非対称性形成において、Wntシグナルが重要な機能をはたしていることを明らかとした。また、この中腸の左右非対称性形成には、WntのリガンドとしてWnt4、レセプターとしてFz2が機能していることを明らかとした。しかし、これまでにWntシグナルによる左右非対称性の形成については、左右性に関する研究が進展している他の動物種においての研究がほとんどない。本研究によって、これまでに私は、消化管中腸の左右非対称性形成には、古典的Wntシグナルが中腸の環状筋細胞で活性化することが必要であることを明らかとした。また、古典的Wntシグナルは、中腸環状筋細胞の左右非対称な再編成において重要な機能を果たしていることを明らかとした。Wntシグナルが果たすこのような左右非対称性形成における機能は、他のすべての生物において報告がなく、Wntシグナルのもつ新たな側面を示唆する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究によって、古典的Wntシグナルの活性化が、ショウジョウバエ胚消化管の左右非対称性形成において重要な機能をはたしていることが明らかとなった。また、古典的Wntシグナルの活性化は、中腸環状筋細胞の左右非対称な再編成に必要であることが明らかとなった。このようなWntシグナルの果たす機能は、本研究によって初めて報告された例であ「り、以上のことにより、本研究が順調に進展しているものと言うことができると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
中腸環状筋特異的に活性化するレポーター遺伝子を作出し、このレポーター遺伝子の発現パターンについて解析する。また、中腸の左右非対称性形成に関与するMyosin2の調節因子の一つである、Squashの局在について、抗体免疫染色を用いて調べる。
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