2011 Fiscal Year Annual Research Report
物質・エネルギー変換を目的とした共生系バイオプロセスの構築
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11J09692
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西尾 晃一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 微生物太陽電池 / 光合成微生物 / 電流産生菌 / 微生物生態系 / 電気化学培養 / 電子メディエーター / 生体親和性 / 細胞膜透過性 |
Research Abstract |
本研究員は新たな再生可能工ネルギー・再生可能資源利用技術の開拓を目指し、生きた光合成微生物を用いた太陽電池である微生物太陽電池に関する研究を行ってきた。今までの研究において自然微生物群集や2種類のモデル微生物(光合成微生物と電流産生菌)を利用する微生物太陽電池の構築に成功した。しかし、その光電変換効率は0.1%と低いことが課題であった。光電変換メカニズムを分析すると、光合成微生物の有機物生産が変換効率を下げる主な要因であった。そこで光合成微生物の細胞を捕食し有機酸を分泌する細菌Lactobacmusを新たに系内に導入することで、光合成微生物バイオマスから有機酸への変換を促進することを試みた。その結果、光電変換効率が0.5%となり5倍に向上させることができた。さらに、この機構を応用することでアオコの除去とエネルギー生産を両立したシステムといった新たな展望を開拓するに至った。 一方で、本研究で用いたような電気化学システム内での微生物代謝は、微生物-電極間の電子の授受によって、微生物の代謝様式が変動することが知られており、電極電位の制御により代謝を活性化することができる。これを電気化学培養という。 一般的に微生物細胞質内と電極との間の電子の授受にはメディエーター分子が必要だが、従来の細胞膜透過型メディエーターは、細胞毒性が強いとの問題があった。そこで本研究では、高い生体適合性を有する2-メタクリロイルオキシエチルポスホリスコリン(MPC)とビニルフェロセンとからなる両親媒性ポリマーを合成することで、生体親和性を有する細胞膜透過型電子メディエーターの構築を目指し研究を行った。その結果、合成したポリマーは細胞毒性の低い細胞膜透過型電子メディエーターとして機能することを見出した。このような性質を持ったメディエーターはこれまで全く知られておらず、電気化学培養に関する新たな方法論を開拓するものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2種類のモデル微生物の共生系を用いた微生物太陽電池において、光電変換メカニズムを代謝産物解析を通じて考察したところ、光合成微生物からの有機物生産が変換効率を大きく下げていることがわかったため、捕食性細菌の添加により変換効率を大きく向上することができたが、それを応用することでアオコ除去と発電を両立するシステム、といった新たな展望を拓くに至ったため。また、生体親和性を有する細胞膜透過性型メディエーターの開発にも新たに着手し、目的のものを得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したポリマーの電子伝達機構の電気化学的解析を行うとともに、電極電位を制御することで微生物-電極間の電子伝達を制御し、微生物の代謝様式への影響を遺伝子発現や代謝産物に関して網羅的に解析する予定である。電気化学培養する微生物としては、具体的には酵母(エタノール発酵)やコリネ菌(アミノ酸発酵)などを候補としている。また、メディエーターの電子伝達能の向上や、異なる種類の酸化還元種を持つポリマーの合成にも着手したい。
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