2012 Fiscal Year Annual Research Report
物質・エネルギー変換を目的とした共生系バイオプロセスの構築
Project/Area Number |
11J09692
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西尾 晃一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電気化学 / 細胞外電子伝達 / 生体親和性ポリマー / 代謝制御 / 光合成微生物 / 生体リズム / バイオプラスチック / 酸化ストレス |
Research Abstract |
本プロジェクトでは、微生物が細胞外電子伝達を通じて外部と電気化学的に相互作用することで物質・エネルギー変換を行う共生系バイオプロセスを構築することを目的として研究を行っている。昨年度は微生物を破壊することのなく細胞膜を透過できる、生体親和型レドックスポリマー(PMF)を構築することに成功し、微生物から外部の電極へ細胞外電子伝達を起こすことに成功した。この成果は一流学術雑誌ChemPhysChemへの掲載が決定した。 本年度はこれを用いて、生体内の代謝や遺伝子発現を細胞外電子伝達を通じて電気化学的にコントロールし、微生物の物質・エネルギー変換プロセスを活性化することを試みた。具体的には、バイオプラスチックの原料となるポリヒドロキシ酪酸(PHB)を生産する微生物Ralstonia eutrophaの代謝を電気化学的に活性化することを試みた。その結果、RalstoniaがPMFを介して細胞外電子伝達を行うと同時に、PHB生産代謝が活性化することがわかった。本研究の成果を論文発表する予定であり、現在原稿の執筆中である。 他にも、PMFを用いて光合成微生物の代謝に電気化学的に干渉することによって、生体概日リズムや光ストレスへの影響を調べた。その結果、PMFを用いて光合成微生物に電気化学的な概日周期摂動を与えることによって、生体概日リズムを電気化学的に制御できることを見出した。また、酸化体のPMFが光化学系IIから直接電子を獲得できることも確認され、光合成電子伝達系におけるプラストキノンプールの酸化還元状態がPMFを用いて電気化学的に制御されていることもわかった。現在はさらに、電気化学摂動と光ストレスとの関係性について解析している。 本研究ではさらに、新たな酸化還元電位を持つ生体親和型レドックスポリマーの合成に成功し、電極から微生物生体内へ電子を注入することによって、微生物を培養することを目指し研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、細胞外電子伝達を媒介する生体親和型レドックスポリマーを開発することによって、微生物の生体内の代謝を細胞外の電極の電極電位によって制御することとしていた。実際にバイオプラスチックを生産する微生物の代謝を電気化学的に制御することに成功したが、さらに、光合成微生物内の概日リズムも制御できることがわかった。また、異なる酸化還元電位を有する生体親和型レドックスポリマーの開発にも成功し、当初の計画以上に研究が進展する結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後生体親和型レドックスポリマーを用いて光合成微生物内の酸化還元バランスを電気化学的に制御することによって、光強度に対する光ストレスの緩和効果の影響を調べ、概日リズム変動との関係性を調べる予定である。さらに、従来より負電位側に酸化還元電位を有する生体親和型レドックスポリマーを開発することによって、微生物生体内に電極から電子を注入ことに試みる予定である。これにより、微生物のCO_2固定代謝を電気化学的に駆動することが期待されるだけでなく、レドックスポリマーを介した電気化学的な微生物-微生物間のコミュニケーションが可能であると期待される。このように電気化学的な微生物共生系の構築を目指し、物質・エネルギー変換プロセスへの応用を目指す。
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Research Products
(9 results)