2011 Fiscal Year Annual Research Report
陸の風化と栄養塩動態の変動が気候におよぼす影響の定量的再評価
Project/Area Number |
11J09701
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牛江 裕行 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員DC2
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Keywords | 炭素循環 / 地球システムモデル / 氷期-間氷期サイクル / 河川 |
Research Abstract |
今年度は、モデルを用いた数値実験および論文執筆に重点的に取り組み、以下の結果を得た。 氷期の海水準低下に伴う大陸棚堆積物の風化を想定して陸からの有機物流入実験を行い、大気CO_2の変動を解析することで過去の気候における陸源栄養塩の寄与を評価した。その結果、従来指摘されていたたような大気CO_2の低下は堆積物中の炭素/栄養塩比が60以下の場合でしか起こらず、氷期-間氷期サイクルにおける大陸棚堆積物の風化は、風化量を海水中の炭素同位体比の変化量から推定した場合、大気CO_2を10-30ppm増加させる働きを持つことが明らかとなった。モデルに炭酸塩堆積物モジュールを組み込み、より長い時間スケールにおいてこの効果に対する堆積物の応答を評価する数値実験も行ったところ、大気CO_2の上昇を海底の炭酸塩が溶解することによって中和・抑制する炭酸塩補償作用によって、大気CO_2の増加幅は5-15ppmに抑えられたが、大気CO_2の低下はやはり見られなかった。この結果は氷期-間氷期サイクルにおける新たなネガティブ・フィードバック機構の存在を示すもので、その成果は論文として国際誌に投稿した。 また、霞ヶ浦で行ったサンプリング調査によって得られた試料のほか、これまでに採取した試料を用いた解析により、ダムは陸水中から栄養塩を減少させ、堆積物として除去するはたらきをしており、陸から海への物質輸送を妨げることが示された。湖沼やダム湖の多くでは湖水中の光合成により河川水中から炭素・栄養塩が除去されるダムの建設は、下流域の水循環の変化に伴う直接的な影響だけでなく、栄養塩輸送量の減少による間接的な気候影響を持つ可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の年次計画に照らして、フィールド研究・モデル研究ともに所定の成果を得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、モデル研究をさらに継続するほか、現代の物質循環に置いて湖沼やダムが果たしている役割を明らかにするため、追加のサンプリングや分析結果の解析などを重点的に進める。
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