2011 Fiscal Year Annual Research Report
内部に高極性の空間を有する大環状化合物のカラムナー集積化と新機能開拓
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11J09721
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 浩平 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 大環状化合物 / カラムナー液晶 / 多孔質材料 / ペプチド / 電場応答性 / 大面積配向 / お椀型分子 / 超分子化学 |
Research Abstract |
本研究では、海洋天然物由来の大環状ペプチドの特異な構造に着目し、その類縁体をカラム状に自己集積化させ、新規な多孔質性材料を開発することを目指している。はじめに、カラム状集積化を促すため、大環状部位の周りに複数の長鎖アルキルを導入した分子を合成した。核磁気共鳴及び赤外吸収測定の結果より、環内のアミド水素はチアゾール環の窒素原子との間で分子内水素結合を形成し、剛直な環構造の形成を促しており、側鎖部位のアミドは分子間水素結合を形成していることが明らかとなった。バルク状態での偏光顕微鏡観察、示差走査熱量測定及びX線回折測定を行ったところ、室温を含む広い温度範囲においてヘキサゴナルカラムナー液晶相を発現していることがわかった。X線回折により求められた格子定数と分子モデリングを考慮した結果、この大環状化合物はお椀型構造をとっていると考えられる。そして、バルク状態でも環内のアミド水素が分子内水素結合を形成していることから、これらの分子から成る超分子カラムの内部には、サイズが厳密に制御されたナノチャネルが形成されていることが期待できる。 お椀型構造をとっているということは、これらの分子のお椀の軸方向には双極子が発生していることが期待でき、電場などの外部刺激に応答することが期待できる。実際に、この固体サンプルをITOを蒸着させたガラス基板ではさみ、電場を印加したところ、カラムが電場に沿って巨視的に配向することが明らかとなった。これはナノ空孔のダイナミックな配向制御に成功した世界で初めての例であり、物質分離技術や新規生体機能材料など、様々な分野への応用へと繋がっていくことが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では大環状化合物のカラム状集積化が1年目の目標であったが、それを達成しただけでなく、このナノ空孔を有するカラム状構造体の大面積配向制御にまで成功した。これは、将来的に空孔内での物質変換反応やイオン輸送などへの展開を見据えた際に、その効率を格段に向上させるツールとなり得る。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、2年目は得られた多孔質体の光架橋による固定化に取りかかる。これまでの研究により、カラムの配向制御法を確立していることから、基質が重合フィルムを効率よく透過することが期待できる。
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Research Products
(5 results)