2011 Fiscal Year Annual Research Report
非期待効用理論のための計量経済モデルの構築とその実証研究
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11J09741
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 慎矢 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | ベイズ統計学 / 計量経済学 / 医療経済学 |
Research Abstract |
三つの課題について研究を進めた。まず、既に投稿済みであった論文"Bayesian Estimation of Entry Games with Application to Japanese Airline Data"については、Japanese Economic Reviewに掲載が決定した。また契約理論に基づく保険の購買行動の分析については、アメリカの介護保険に関するデータを用いて実証分析を行う予定であったが、アメリカの歯科保険のデータを用いることでより明確な結果を出した。結論として、モラル・ハザードの他にadvantageous selectionという逆選択とは逆の結果が示唆されたことが貢献である。本研究はメインの分析が終了していて、細部の頑健性の確認が済み次第投稿する予定である。この研究に関しては日本経済学会秋季大会、統計関連学会連合大会で発表を行った。さらに、予定していた日本の介護に関する研究として、有料老人ホームに関する、ノンパラメトリックベイズ予測を用いた分析を始めた。これは、入居金制度と呼ばれる、ホーム側が居住者の余命に関するリスクを全面的に背負う現行制度について、その消費者厚生に対する効果を分析する研究である。方法としては、経済モデルを構築してパラメータを推定した後で、もし入居金制度がなくなった場合に消費者がどれだけの額を支払うことになるかを予測し、現行の制度と比較するという形で分析した。結論として、入居金制度はほとんどの入居者の総支払額を上昇させていることが示唆された。本研究に関しては、統計サマーセミナー、グローバルCOE Hi-Stat経済統計若手研究会で発表を行った。またさらに介護の経済学的研究として、介護労働に関する分析を始めている。その一環としてレビュー論文を日本労働研究雑誌に掲載した。そして、これらの成果をまとめて、博士論文を提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
査読付き論文を一つ掲載し、二本の論文について投稿直前である。これらをまとめて博士論文を提出できたことは、学生としては大きな成果である。投稿直前ではなく投稿済みとして報告できていればより高い評価を出来たと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
まず介護労働に関する分析をまとめることが大きな目標である。具体的には、介護労働者の離職に関して、労働者のモチベーションに関する情報の非対称があるような介護労働市場をモデル化し、その中で資格教育に関する企業の補助の役割などを検定可能な形で導出し、実証分析を行おうと考えている。データとして東京大学データアーカイブ研究センターに「介護労働実態調査」の貸与を申請し、すでに許可されている。また、保険に関する論文で開発した統計手法が、社会ネットワークの分析に応用可能であることが分かってきたため、この分野についても研究を進めたいと考えている。そして、昨年度から提案していたが他の研究を優先したために後回しとなっている、非期待効用理論についての宝くじの購買データを用いた研究を進展させる予定である。こちらについても、イギリスのFamily Expenditure Surveyの使用許可を取っている。
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