2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09795
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野口 篤史 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イオントラップ / 量子情報処理 / エンタングル状態 / 量子シミュレーション |
Research Abstract |
量子情報処理分野は、従来の情報処理技術に量子力学の様々な性質を導入する事でその性能を飛躍的に高めようとする研究分野である。特に古典的なコンピュータでは計算量的に難しい問題を量子論を使って計算する量子コンピュータの開発、またアナログ的な量子計算ともいえる量子シミュレーションの実現などに向け広く研究がなされている。近年では、少数のqubitを用いた小規模な量子ゲート実験や量子シミュレーションは、様々に実現されている。それらを踏まえ、イオントラップを用いた量子情報処理分野においては、qubit数を増やす事が本格的な課題となり研究が進んでいる。 量子系のqubit数を増やすという事で、平成24年度は量子系に特徴的な量子エンタングル状態を一つのイオントラップ内の多数のイオンを用いて生成するという事を目標に実験を行った。多くのエンタングル状態はそのqubit間の相関のせいでqubit数の上昇に伴い外乱に対してどんどん弱くなる事が知られている。そのために、生成途中ですらその状態は壊れていってしまう。そこで、従来の方法に比べノイズに対して強い生成方法が必要となる。そこで、一般にノイズに強いと言われる断熱過程に着目し、従来の方法に比べノイズに対して強い生成方法を開発し、実現した。 実験では4qubitでは結果の統計誤差を十分に超えてエンタングル状態の閾値を超えた状態を生成する事に成功し、6qubitでも期待値は閾値を超えるような状態常生成する事ができた。(当研究室における)従来の生成方法に比べ、生成された状態はおよそ半分以下程度のエラーに抑えられており、ノイズに強い方法で多数qubitのエンタングル状態の生成に成功したと言える。また、今回開発したこの方法は量子XYモデルに対する量子シミュレーションととらえる事も可能で、量子XYモデルの基底状態としてのエンタングル状態を生成している。この事から今回の実験では量子XYモデルのシミュレーションを実現したという事もできる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」で触れた手法とは異なる手法ではあるが、量子シミュレーションの実現に成功し、またその拡張性について考察する事ができ、続く研究の方向性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の「研究の目的」で触れた任意格子のスピンモデルの量子シミュレーションを実現するため、イオンへの光の照射方法を変更し、また相互作用を作り出す光の周波数幅をより狭くする事でより綺麗な相互作用を作り出す。 また、トラップイオンを用いた従来とは異なる量子系を構築するため、リニアパウルトラップ中において複数のイオンからなる2次元のイオン結晶に着目した実験を行う。
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Research Products
(3 results)