2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09795
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野口 篤史 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | イオントラップ / レーザー冷却 / 量子力学 / 量子トンネル効果 / アハラノフ・ボーム効果 |
Research Abstract |
線形パウルトラップ中の1次元イオンにおいては、その運動を振動基底状態まで冷却しレーザーで操作することで、量子情報処理実験が広くなされてきた。一方で線形パウルトラップは、トラップ条件を変える事でイオンを2次元配列させる事が可能であるが、そのような2次元配列イオンはこれまで振動基底状態まで冷却された例がなく、量子的に取り扱う事が難しかった。今回、そのような2次元配列イオンにおいて、特定の振動モードに着目する事で振動基底状態までの冷却が可能である事を示し、2次元配列イオンを量子的に取り扱う事に成功した。 粒子の波動性を強く示す量子力学的な現象の一つとして量子トンネル効果と呼ばれる現象がある。これはエネルギー的に古典的には乗り越えられない障壁を、量子の波としての性質によって乗り越える事ができる現象である。今回、振動基底状態にある3つのイオンからなる2次元配列を用いる事で、異なるイオン配置間での量子トンネル効果を観測した。一方で、自然界においても分子配列の一部分が量子トンネル効果によってその配置を変化させる系が存在している。このような系の一つは量子回転子系と呼ばれ、その量子的な振る舞いを利用した核スピン偏極など、その応用も研究がされている。今回の成果はこの量子回転子を量子的な制御性の良いイオントラップ中に生成できた事を意味している。 また、この系を用いる事で量子トンネル自体に着目した実験を行う事ができる。イオントラップ中での量子回転子は電荷をもったイオンで構成されており、そのためアハラノフ・ボーム(AB)効果と呼ばれる磁場との相互作用を考える事ができる。簡単な計算により量子回転子の回転速度をAB効果によって制御する事ができる事がわかり、その変化を実験的に確認する事に成功した。AB効果は自由空間中では1985年に外村らによって確認されているが、今回の実験は量子トンネルしている間での荷電粒子のベクトルポテンシャルとの結合を見た初めての例となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
|
Research Products
(11 results)