2011 Fiscal Year Annual Research Report
赤外線天文衛星「あかり」の分光データを用いた褐色矮星大気構造の研究
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11J09991
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
空華 智子 独立行政法人宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所, 宇宙物理学研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 赤外線天文学 / 褐色矮星 / 大気モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、「あかり」で取得した褐色綾星の2.5-5.0μmの分光データを用いて、『褐色倭星の上層大気における非熱平衡化学組成の普遍性を調査する』とともに、『分子組成を熱平衡状態から逸脱させる物理・化学過程を解明する』ことである。本年度は、新たな大気モデルの導出を目指し、次の通り研究を実施し、成果を得た。 1.信頼性の高いスペクトルを得るためにデータ処理技術の改善を行い、より高品質なスペクトルの抽出を行い、褐色綾星の2.5-5.0μmの連続的かつ高品質なスペクトルデータセットを世界で初めて作成した。 2.各天体の観測スペクトル中におけるCH4,CO,CO2の吸収バンド強度を調査し、COやCO_2の吸収バンド強度の熱化学平衡からの逸脱がT型矮星において普遍的現象であることを示した。 3.褐色矮星の大気モデルUnified Cloudy Model(Tsuji 2002, 2005)を用いた解釈を試みた。 (1)スペクトル型の変化に伴い光球からのダストの消失を示唆する結果を得た。 (2)L5型矮星においてCH,の吸収バンドの有無が天体の質量およびダスト量の指標になることを示した。 4.当初予定していた研究計画の一つ『上層大気の化学組成比をパラメータサーベイにより見つけ出し新たな大気モデルを導出する』に物理的根拠を加えた解析を行った。CO_24.2pmの吸収バンド強度の不一致については、これまで用いてきた太陽金属量と異なる「CおよびO」の元素存在量によって説明可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は『上層大気における分子の化学組成比をパラメータサーベイにより見つけ出す』という計画であったが、更に進展させ、背景の物理的根拠として「元素存在量」に着目し、新たな大気モデルを計算・導出し、各天体において元素存在量が異なる可能性があることを示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の予定では、平成24年度は新たな大気モデルを基に、非平衡化学組成を導く大気中の物理・化学を気象現象という観点から検討を進める予定であった。しかし、平成23年度における研究で、「元素存在量」という物理量に着目し研究を行い、観測データが示す非平衡化学組成に対して物理的根拠のある説明をすることが可能であることを示すことができた。そこで、来年度は、まずは元素存在量に関して更に系統的解析・議論を行う必要がある。
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Research Products
(4 results)