2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ会合による核酸の高感度検出を目指した新規DNAプローブの開発
Project/Area Number |
11J10029
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤井 大雅 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ヘテロH会合体 / 励起子相互作用 / Molecular Beacon / 消光能 / DNA |
Research Abstract |
近年、ガンなどの病の早期発見のためDNA検出プローブ(Molecular Beacon:MB)が着目されている。これらには蛍光色素と消光剤のヘテロ会合による消光が利用されており、この消光能の向上がプローブの高感度化に不可欠である。この消光能は色素間の励起子相互作用に依存すると考えられるが、これまで検証されていなかった。私はこれまでの研究でDNA二重鎖を利用したヘテロ会合体を調製し、励起子相互作用の異なる会合体の調製に成功してきた。そこで本研究では、このヘテロ会合体を利用することで励起子相互作用と消光能の関係を調べ、高感度DNAプローブの開発を目指す。本年度では励起子相互作用と消光能の関係を調べ、プローブによる液中でのDNAの高感度検出を目指した。まず、蛍光色素Cy3と消光剤として4種類のアゾ系の色素を組み合わせ、ヘテロ会合体を調製した。これら4種類のヘテロ会合体の吸収及び蛍光スペクトルを比較し、励起子相互作用と消光能の関係を調べた結果、励起子相互作用の増大に伴い消光能が高くなった。そこで、最も励起子相互作用が高い消光剤ニトロメチルレッドを用いてプローブを調製した。その結果、ターゲットの有無による蛍光強度比は最大で70倍となり、液中での高感度検出に成功した。しかし、プローブの感度は色素導入位置やMBのステム部位の配列に大きく依存しており、安定して高感度検出可能なプローブを開発する必要があった。そこで、更なる高感度化のための設計として、蛍光色素に会合させる消光剤の数を増やした。具体的には、蛍光色素1残基に対して消光剤1-5残基を会合させた。その結果、励起子相互作用及び消光能は消光剤2残基で共に最大となった。そこで、この設計を利用した結果、感度は1対1型プローブの28倍から2対1型プローブの68倍と大きく高感度化した。以上より、高感度DNA検出プローブの開発に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、モデル系での励起子相互作用と蛍光色素の消光能の関係を調べ、DNAプローブを調製するところまでを一つの目標としていた。しかし本年度では、そこからプローブの更なる高感度化まで達成でき、DNAマイクロアレイ上で用いるのにほぼ十分な検出感度を得ることができた。以上のことから、当初の予定よりも進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終的にプローブに求められる感度は、DNAマイクロアレイ上での検出では100倍以上必要となる。この観点から言うと、プローブでは感度が100倍へ届かなかったが、linear DNAの系では100倍に到達した。そのためステム部位の配列を最適化すればアレイへ必要な感度は十分達成できると考えられる。そこで、今後はアレイ上でのDNA検出を進める。また、本系で用いた通常のH会合体では必ず会合に伴い蛍光色素が消光するため、発光-消光によるプローブでの用途に限られていた。そこで、今後は同時に励起子相互作用をうまく活用した新たな色素会合体を開発することで新たな応用への可能性も検討する予定である。
|