2012 Fiscal Year Annual Research Report
眼球運動による視覚情報の時空間統合および分離の解明
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11J10037
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺尾 将彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 眼球運動 / 対応問題 / 空間圧縮 / 曖昧運動 / サッカード |
Research Abstract |
初期の視覚情報処理は網膜座標位置に基づいて行われる一方、眼球運動は網膜像と外界の関係を乖離させてしまう。このことから網膜位置に基づいた信号処理だけでは外界の正しい推定は難しいにも関わらず、我々は安定した外界を知覚できる。本研究の目的は網膜座標系に基づく処理から環境座標系に基づく処理への変換メカニズムを明らかにする事である。眼球運動の情報を利用した非網膜的な情報処理メカニズムの解明は視覚系がどのように網膜からの入力から普段の見えに変換しているのかを知る上で重要である。既に追跡眼球運動時の運動対応の結果は眼球運動に関連した皮質由来の情報が網膜入力に基づく処理に影響を及ぼすことを示唆するデータを前年度までに得る事が出来た。そこで次に、急速眼球運動(サッカード)による皮質由来の情報も同様に運動対応に影響を及ぼすのかを調べた。具体的には、サッカードによる空間圧縮と呼ばれる現象を利用した。サッカード直前に瞬間呈示された刺激の位置は実際の網膜呈示位置よりもサッカードの到達目標へ近づいて知覚される。この現象と、モーションカルテットと呼ばれる曖昧運動の一種を組み合わせ、網膜像位置と見かけの位置を乖離されるパラダイムを開発し、運動対応がサッカードによって縮んだ空間に基づいて行われる事を示唆するデータが得られた。そこでさらに、本結果が眼球運動に伴う画像の急激な変化によるものなのか、あるいは眼球運動そのものによるバイアスの結果かどうかを実験的に確認し、それらが原因でない事を明らかにした。現在これらのデータをまとめ論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、順調に実験結果を得る事が出来ている。また、それに伴い国際学会への発表や論文作成なども進んでおり、順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度得られた結果を論文にまとめ国際誌に投稿する。計画書に記載した3年次の研究計画を実施する。
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