Research Abstract |
現在,埋立・焼却処分されている廃棄海藻が毎年のように多量に発生している。その処分にかかる費用とエネルギーを削減するため,廃棄海藻の分解による減容化に,さらには,分解に伴って産生される多糖類や単糖類,単細胞体などを,医薬品,バイオマス燃料,養殖餌料などに転換して再活用することに大きな関心が寄せられている。一方,海藻に含まれる多糖類に関しては,報告例の少ないラミナリン,フコイダン,カラギーナンなどの機能性多糖類の分解菌も含めて,さらなる分解菌の単離が産業界で望まれている。そこで,われわれは,ワカメ藻体の分解を指標として,富山湾の海水や海底堆積物から新たな海藻分解菌の単離を試みた。その結果,107株の分解菌を単離することができ,その中でもMyt-1株は褐藻,紅藻,緑藻の3種の海藻藻体を分解することができた。これまでに報告されている海藻分解菌は,単一の種類の海藻のみにしか分解活性を示さないため,本菌株が様々な種が混在していると考えられる廃棄海藻の減容化に有用であることが示された。さらに,Myt-1株が,海藻藻体の分解に関与すると思われるアルギナーゼ,セルラーゼ,アガラーゼ,カラギナーゼなど,10種類以上の酵素を産生することを明らかにした。また,ザイモグラムによる多糖分解酵素の検出やDNA-DNAハイブリダイゼーション等の結果から,Myt-1株が1988年に発見されて以来24年間,1属1種しか単離されていなかったSaccharophagus属の新種である可能性が強く示唆された。したがって,今後の研究により,新たな特性を持った多糖分解酵素が見出される可能性も非常に高い。また,海洋バイオマスの原材料として養殖・増産されつつある海藻の活用にも,本研究が大きく寄与するものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の申請では,Myt-1株の各種海藻藻体に対する分解活性,各種多糖類の分解能,SDS-PAGEとザイモグラムによる分解に関与する多糖類分解酵素の検出を主な研究目的として計画した。それらの結果,研究目的を達成できた上に,さらにMyt-1株は,複数種の海藻藻体や10種類以上の多糖類を分解できたことに加え,Saccharophagus degradans 2-40株が単離された1988年以来,24年間1属1種であったSaccharophagus属の新種である可能性が強く示唆することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Myt-1株は褐藻,紅藻,緑藻の3種の海藻藻体を分解することができた。また,フコイダンやカラギーナンといった機能性多糖類も分解できることが見出された。そこで,そのような多糖類分解酵素をより効率よく活用して産業化に結び付けていくための第一歩として,今後は,まず,Myt-1株の持つ各多糖分解酵素遺伝子をShotgunクローニング法,Primer walking法などで同定することを試みたい。次に,同定できた遺伝子と発現用ベクターなどを用いて各酵素を大量発現させ,それらを精製した後に,得られた各酵素の特性や有用性を調べる研究を展開したい。さらに,Myt-1株の全ゲノム配列の解析や分布域を調べ,Saccharophagus属の微生物生態学的知見の蓄積に貢献したい。
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