Research Abstract |
現在,海藻の製品化の過程で出る海藻端材や沿岸域への漂着海藻が毎年のように多量に発生しており,それらの多くが埋立・焼却処分されている。そこで,それら廃棄海藻の減容化と,それに伴って産生される単糖やオリゴ類,単細胞体の有効利用を目指して,富山湾の海底堆積物中から複数種の海藻藻体を分解し,10種類以上の多糖分解酵素を持っている新種の細菌Saccharophagus sp.Myt-1株を単離した。そこで,本申請では,shotogun法を用いた,Myt-1株が産生する多糖類分解酵素遺伝子の単離と同定,大腸菌を用いた大量発現系の構築,さらには,それらの精製とキャラクタリゼーションを目的に研究を進めた。その結果,アルギン酸リアーゼ(algMytC)遺伝子とセルラーゼ(celMytB)遺伝子をそれぞれ1種ずつ単離することができた。algMytCとcelMytBのORFはそれぞれ1,032bpと1,893bp,アミノ酸は,343残基と631残基と推定され,それぞれの予想アミノ酸配列の相同性検索を行った結果,S.degradans2-40株のalg7A,cel5Hと95.9%,98.9%の一致率を示した。次に,大腸菌を用いた両酵素の大量発現系を構築し,その発現産物の特性を調べた。その結果,AlgMytCの反応至適pHは9.0で,pH8.5-10.0でも90%以上の活性を保っており,これまでに報告されている細菌由来のアルギン酸リアーゼの中でも,高いアルカリ耐性を持つ酵素であった。一方で,CelMytBは,反応至適温度が55℃と高く,水溶性のセルロース(CMC)だけでなく,結晶性のセルロース(Avicel)やキシランの分解活性も有していた。さらに,両酵素とも様々な界面活性剤に対しても高い耐性を示していた。これらの結果から,本研究により見出されたこれらの酵素は,化粧品,農業,食品,バイオエタノール産生など様々な産業分野に利用できることが考えられた。
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