2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J10227
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
富田 文菜 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヘモグロビン / X線結晶構造解析 / 配位子輸送 / 光解離 / 時間分解測定 / 一酸化炭素 / 動的構造 / 構造生物学 |
Research Abstract |
平成24年度は、23年度に引き続き、一酸化炭素結合型ヘモグロビンの分子変形過程を明らかにするため、ヘモグロビン(Hb)と配位子(一酸化炭素、CO)の複合体単結晶を作製し、放射光施設でのX線回折実験を行った。 昨年度までは、ヒト成人型ヘモグロビン(HbA)、ヒト成人型ヘモグロビンの天然変異型であるヘモグロビンC(HbC)について、配位子解離に伴う構造変化の過程を観測したが、今年度はヘモグロビンにアロステリックエフェクターを付加した試料についても同様の測定を行った。アロステリックエフェクターを付加することにより、ヘモグロビンの酸素親和性が変化し、より構造変化の起こりやすい状態で測定を行うことが可能である。アロステリックエフェクターを付加した一酸化炭素結合型ヘモグロビン単結晶の作製は、自治医科大学の生物物理学部門の研究室の設備を使用して行った。高エネルギー加速器研究機構の放射光科学研究施設Photon Factory-Advanced Ring(PF-AR)のビームラインNW14Aにて、試料を140K程度の低温に保ち、15kHzの高繰り返しレーザーを照射して、配位子の光解離の過程を観測した。その結果、HbA、HbC同様に、アロステリックエフェクターを付加したHbでも、時間とともに光解離した配位子がヘモグロビン分子内部の空洞にトラップされる様子が観測された。さらに、アロステリックエフェクターを付加したHbでは芳香族アミノ酸残基のシフトが大きく観測され、ヘモグロビンの分子変形過程の詳細を観測することができた。 また、低温条件下での単色X線回折測定だけでなく、白色X線を用いた室温付近でのタンパク質-配位子相互作用のダイナミクス観測についても、実験を試みた。こちらはX線とレーザーを10Hzで同期し、ポンプ・プローブ実験を行った。室温での実験に関しては、今後実験条件のさらなる検討が必要であるように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト成人型ヘモグロビン(HbA)、ヒト成人型ヘモグロビンの天然変異型であるヘモグロビンC(HbC)、アロステリックエフェクターを付加したヘモグロビンについて、低温状態で光照射下でのX線結晶構造解析を行う事ができ、当初の研究計画に対してはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、低温下の実験で得られた成果を論文としてまとめ、発表することが第一に求められる。 また、ヘモグロビンの配位子解離に伴う構造変化について、室温付近においても原子レベルで観測できるよう、進めていく予定である。室温での測定は、低温での中間状態のトラップとは測定方法が本質的に異なり、高度な技術や工夫が必要となることが予想されるが、昨年参加したワークショップで得た情報等を用いて実験を試みたい。
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Research Products
(3 results)