2011 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論に基づく宇宙モデルが観測に及ぼす影響の研究
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11J10290
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 幸一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宇宙論 / 超弦理論 / 宇宙ひも / 重力波 / 暗黒放射 / 非ガウス性 |
Research Abstract |
1:暗黒放射の持つ等曲率揺らぎと、その非ガウス性の研究 宇宙背景放射の観測等から示唆される、他の物質と相互作用をしない軽い粒子(暗黒放射)に着目し、それが初期宇宙で作られ、独立な密度揺らぎ(等曲率揺らぎ)を持つ可能性について調べた。超弦理論を背景に持つ模型等を含む一般的な枠組みの中で等曲率揺らぎの大きさとその非ガウス性を計算し、現在までの観測から得られる暗黒放射に対する制限と、将来の観測で得られると期待される制限を求めた。 2:非常に太い宇宙ひもによる粒子放出の宇宙論的影響の研究 超対称性理論の枠組みの中で、非常に太い宇宙ひも(コズミックストリング)が自然に発生しうるという点に着目し、そのような宇宙ひもがもたらす宇宙論的影響を調べた。太い宇宙ひもは、通常のものに比べ、宇宙ひもの重なりによる粒子放出の効果が増幅される。その粒子生成が、ビッグバン元素合成の阻害や暗黒物質の過剰生成等の問題を引き起こさないという要請から、太い宇宙ひもに対する制限を求めた。 3:将来の宇宙の観測実験における宇宙ひものパラメータの決定精度の推定 宇宙ひもから放出される重力波が、現在建設中の重力波干渉計によって検出された場合、どの程度の精度で宇宙ひものパラメータを決定できるかを調べた。重力波バーストと、無数のバーストが重なってできる背景重力波という2つの異なるタイプの重力波の観測が、異なる情報をもたらし、それらを組み合わせることでより精度よくパラメータを決定できると分かった。特に、超弦理論由来の宇宙ひもは組み替え確率pが低いことを念頭に、pに対する制限を詳細に求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初期宇宙に複数のスカラー場によって非ガウス的な密度揺らぎが作られる可能性や、超弦理論由来の宇宙ひもから放出される重力波等、当初想定していたテーマに関する深い研究がなされた上に、暗黒放射や宇宙ひもからの粒子放出と言った、より多様なトピックを扱うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
暗黒放射に関する研究は、かなり一般的な枠組みの中で行ったものなので、それを用いて、超弦理論に関連する模型に対する示唆が得られるかどうかを模索する。 宇宙ひものパラメータの決定精度の推定に関しては、重力波干渉計のみならず、パルサータイミング実験や宇宙背景放射の観測等の、宇宙ひもが関連するあらゆる実験に考察の対称を広げる。
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Research Products
(5 results)