2011 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性トリアミノイミノホスホランを触媒とする官能性キラル素子合成プロセスの開発
Project/Area Number |
11J10344
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 慎司 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機触媒 / 不斉合成 / 有機化学 / 有機合成化学 / 強塩基触媒 / ホスホニウム塩 / イミノホスホラン |
Research Abstract |
近年持続的利用が可能なものづくりプロセスの開発が求められる中で、光学活性有機塩基は、原子効率の高い直截的結合形成を実現する触媒として重要な位置を占めている。申請者はこれまでに、当研究室で開発された[5,5]-P-スピロ型光学活性テトラアミノホスホニウム塩から系中で調製できるトリアミノイミノホスホランを有機強塩基触媒とする、高立体選択的なイナールへのHenry反応を実現し、これを多官能性天然物の合成に応用することで本法の合成化学的価値を示している。本研究では、反応点に加えて官能基を持つ化合物を基質とし、キラル素子を効率的に与える触媒のプロセス開発に注力し、本触媒の力量を明確にすることを目的とした。まず、脂肪族アルデヒドへの触媒的不斉Henry反応に取り組み、課題として残されている立体選択性の向上を図った。種々検討を行った結果、イミノホスホラン触媒の微細構造修飾が効果的であることを見出し、良好な立体選択性の獲得に成功した。次に、一般に合成が難しいキラルな単純ニトロアルカンを簡便に得るための手法を案出した。具体的には、Julia反応によりオレフィンへと変換できるα,β-不飽和テトラゾリルスルホニル化合物へのニトロアルカンの不斉共役付加反応に着目し、本イミノホスホランを触媒とすることで、高い立体選択性で光学活性ニトロアルカンの前駆体となる生成物を得た。またこれに並行して、本触媒系を利用した新規反応の開発にも着手し、塩基性条件下でのα,α-二置換-α-ヒドロキシアルデヒドを基質とする不斉1,2-転位反応を見出した。本反応は、有用な合成中間体である光学活性なα-ヒドロキシカルボニル化合物を与えるため、合成化学的に価値のあるツールと成り得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究において、脂肪族アルデヒドへの触媒的不斉Henry反応の立体選択性の改善した。またα,β-不飽和テトラゾリルスルホニル化合物へのニトロアルカンの不斉共役付加反応及びα,α-二置換-α-ヒドロキシアルデヒドの不斉1,2-転位反応については未だ満足のいく結果は得られてはいないものの、反応条件の検討および触媒構造の修飾に取り組むことで、近い将来に望ましい結果が得られることが期待できる。以上の事から本研究がある程度の進展を見せていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は今後も、キラル合成素子を効率的に与える触媒プロセスの開発に注力し、本イミノホスホラン分子の強塩基触媒としての能力を明らかにすることを目的とする。また昨年度に引き続き、要時に系中で調製している触媒活性種のイミノホスホランを単離精製し、X線解析並びに低温NMR測定によりその三次元構造を明確にすることを課題の一つとして掲げる。イミノホスホラン分子の単離精製については、簡便かつ効率的な手法を確立するために、さらなる検討が必要である。
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