2011 Fiscal Year Annual Research Report
4次元ゲージ理論と2次元共形場理論の対応によるM5ブレーン多体系の研究
Project/Area Number |
11J10372
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅野 正一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 超対称ゲージ理論 / 共形場理論 |
Research Abstract |
4次元N=2超対称ゲージ理論のネクラソフ分配関数と2次元共形場理論の相関関数の間の関係式、AGT関係式は大きな関心を集め、関係式の拡張など現在でも様々な研究が行われている。一方で、AGT関係式自体の検証や証明はゲージ群が簡単な場合しかなされていない。一般の系でのAGT関係式の検証で困難な点として、(1)SU(N)ゲージ理論に対する共形場理論はW_N代数で記述されるがW_N代数は非線形代数であるため共形ブロックの計算が難しい、(2)両者の一致を見るためにはU(1)部分を適切に補う必要があるが、クイバーゲージ理論などの複雑な系ではU(1)部分の取り方の指標がない、ことが挙げられる。私はAGT関係式の背後にW(1+∞)代数の構造が存在すると考えるとこれら2点の問題は自然に解決できると主張した。W(1+∞)代数には自然にU(1)部分が含まれており、中心電荷がNの自由フェルミオン表現という特別な表現を考えると代数の自由度がWN×U(1)と等価であると予想しそれが正しいことをN=2,3の場合について確かめた。また、中心電荷Nの自由フェルミオン表現にはN個のYoung図の組で指定される基底が自然に存在し、この基底によってW3代数の共形ブロックを展開すると同じYoung図の組で与えられるインスタントン分配関数の公式と一致することを1インスタントンレベルで確かめた。その後は、自由ボソン表示を用いてW(1+∞)代数の相関関数の考察を行った。特に4点関数の場合には上述した基底で展開するとSelberg積分と呼ばれる形に帰着でき、一般の整数NについてSU(N)ゲージ理論のインスタントン分配関数と一致することが任意のインスタントン数について成立することが確かめられた。また、W(1+∞)対称性の相関関数への作用を見るためにWard恒等式を調べることを行った。その結果、簡単な場合には非自明な恒等式が成立することが確かめられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今まで考えられていなかった対称性に注目することで、計算が困難であった一般のSU(N)ゲージ群に対する計算を解析的に行うことができるようになったことは大きな進展である。一方で当初の計画にあったループ演算子や表面演算子についての解析は遅れているため、全体を通じてはおおむね順調な進展と評価される。
|
Strategy for Future Research Activity |
W(1+無限大)対称性が示唆する2次元相関関数の可積分構造や、この対称性がゲージ理論においてどのように実現されているかを明らかにする。その後はその結果のM理論における解釈を調べることで当初の目的であるM5ブレーン多体系の物理について新たな知見を得ることを最大の目標とする。
|