2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J10534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 真史 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 液晶 / トポロジカル欠陥 / 乱流 / 非平衡相転移 / 細線振動 / 特異点ダイナミクス |
Research Abstract |
振動体による液晶トポロジカル欠陥の生成実験にとりくんだ。ガラス板の間にネマチック液晶を封入し、この中に保持したタングステン極細線に交流電流を流すとともに、セルを永久磁石による縦磁場の中において、ローレンツ力によって振動させる。最初は、細線上のところどころに糸状欠陥のループが散見されるが、間もなく細線全体に拡がり、一様にまとわりついた状態になる。駆動電流の増加とともに糸状欠陥が拡がっていく様子を明らかにした。 欠陥が生じ始めるときのレイノルズ数(慣性力と粘性散逸力との比)は、おおよそ10のマイナス3乗であって、いわゆるナビエ・ストークス流体としては乱流化しうる状態ではないが、欠陥乱流の指標であるエリクセン数(粘性力と弾性力との比)を考えると、10の3乗であった。また、欠陥を可視化すると同時に、異なる波長のパルス光源を用いて細線の振動振幅を観察することによって、欠陥生成とともに実効的な粘性が急峻に増大していることを見出した。これは、振動駆動が欠陥維持に必要な力に変換されたものと理解できる。この振動細線による乱流生成法は、超流動乱流においては既に同様の報告があるが、液晶における応用は本論文が初めてである。 また、液晶トポロジカル欠陥との類似性から、位相欠陥が支配的な他の系として反応拡散系における特異点ダイナミクスに着目し、欠陥運動制御の可能性を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シェアの強さによる欠陥生成を正しく定量化するための振動体の表面状態を制御することが困難であった。また、集団挙動の統計性を評価するには、局所的な乱流生成では不十分であることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、欠陥生成に流体としてのシェア強さが寄与していることが評価できた。一方で、乱流様状態の液晶はこれまで電気対流によるものしか詳しく調べられてこなかった。ナビエ・ストークス流体での乱流に、熱対流駆動の場合とシェア流駆動があるように、バルクのシェア流がある液晶系を実験し、乱流状態において2つの駆動力がどのような相互関係を持っているのか、非平衡相転移の観点から明らかにすることをめざす。
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