2011 Fiscal Year Annual Research Report
マウス胎盤内adipsinの繁殖生理における役割―脂質代謝への影響と流産誘発
Project/Area Number |
11J10575
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
武下 愛 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 流産 / 脂質代謝 / 妊娠生理 |
Research Abstract |
自然流産マウスにおける正常胎盤、流産胎盤でのadipsinや脂質代謝因子の動態変化について解析を行った。 <C57BL/6Jマウスを用いた解析> (1)自然流産胎盤ではトリグリセリドの有意な上昇が確認され、脂肪滴の高度な分布が脱落膜、変性した迷路部、らせん動脈周囲に認められた。電子顕微鏡観察では、らせん動脈内に血小板の集積、血管周囲に脂肪滴を有する泡沫状細胞が認められた。(2)Adipsinが関与するacylation stimulating protein(ASP)脂質取り込み経路の重要因子であるカルボキシペプチダーゼN、C5L2レセプター、PI3K、ジアシルグリセロールアシル基転移酵素の転写レベルは、流産胎盤で有意な増加を示さなかった。一方、血管内でトリグリセリドを分解するリポタンパクリパーゼの転写レベルは亢進しており、遊離脂肪酸の新規合成が促進している可能性が示唆された。(3)流産胎盤では抗酸化物質であるglutathione peroxidase 1の転写活性が亢進しており、毒性作用を持つ過酸化脂質の生成・拡散を回避している可能性が示唆された。 <CBA/J×DBA/2流産モデルマウスを用いた解析> 流産胎盤ではadipsinタンパクが有意に上昇しており、脱落膜、変性した迷路部、らせん動脈周囲では脂肪滴の高度な分布も認められた。この変化はC57BL/6Jマウスで見られた変化に類似していた。 Adipsin/ASP経路関連因子は流産後に減少していた。流産直後の検討は必要であるが、少なくとも流産発症後しばらく経過した胎盤ではこの経路の機能的関与は乏しいものと考えられる。しかしadipsinや胎盤内脂質の動態変化は流産発症の機序に因らず普遍である可能性が示され、正常妊娠過程を含め時期を限定してadipsin/ASP経路の関わりを検討する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自ら樹立する予定であったtrophoblast stem cellに関して、次年度に他研究機関から供与を受けることにしたが、流産モデルの解析については予定通り研究を遂行することが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウス胎子線維芽細胞、trophoblast stem cellなどにadipsin遺伝子を一過性発現させ、栄養膜細胞の分化への影響や脂質代謝変化を解析する。またsiRNAを用い、adipsin機能低下による影響も解析する。
|