2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内輸送システムによるイノシトールリン脂質シグナル伝達経路の空間的制御機構
Project/Area Number |
11J10625
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
李 翠芳 近畿大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イノシトールリン脂質 / PI4P5キナーゼ / 細胞増殖抑制 / 細胞内輸送システム / 蛋白質・脂質オーバーレイアッセイ |
Research Abstract |
本研究は、独自の研究成果に立脚した独創的な分子遺伝学的手法とゲノムワイドな手法を用いて、1)生体に必須の役割を持つ脂質の一つであるイノシトールリン脂質:PI4,5P2を介するシグナル伝達経路の制御因子の同定を行い、2)イノシトールリン脂質の空間的ダイナミクスの制御機構を細胞内輸送システムに焦点をあてて明らかにすることで、3)イノシトールリン脂質シグナルネットワークの解明をめざすものである。本年度は以下のことを明らかにした。 遺伝学的アプローチにより、PI4P5キナーゼを介するイノシトール代謝シグナルに影響を与える因子を同定する目的で、PI4P5キナーゼ過剰発現に伴う細胞増殖抑制を回復することのできる遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、一種類のリパーゼを同定した。このリパーゼをPI4P5キナーゼと同時に過剰発現すると、PI4,5P2の量を低下させることにより、細胞増殖抑制を回復したと推測される。またゲノムワイドなアプローチにより、細胞内輸送に関わる因子の変異細胞にPI4P5キナーゼを過剰発現してみた。その結果、エンドサイトーシスに関与する因子のノックアウト細胞において、PI4P5キナーゼ過剰発現に伴う細胞増殖抑制を回復出来なかったのに対し、エキソサイトーシスに関わる因子はPI4P5キナーゼ過剰発現に伴う細胞増殖抑制を回復することを明らかにした。さらに、スクリーニングによりすでに同定してきた2つのPHドメンを持つSlp2について、蛋白質・脂質オーバーレイアッセイ方を用い、結合する脂質を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度に研究実施計画の通り順調に進展している。PI4P5キナーゼ過剰発現に伴う細胞増殖抑制を回復する新たな因子としてリパーゼを同定した。また各種細胞内輸送因子がPI4,5P2シグナルに与える影響を解析し、エキソサイトーシスシステムの役割を明らかにした。さらに当初来年度に予定していたタンパク質・脂質間の結合をアッセイできるシステムを確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に同定された遺伝子群のノックアウト細胞および過剰発現細胞を作製し、細胞増殖や細胞内輸送に与える影響を電子顕微鏡、分泌、エンドサイトーシス、液胞融合などを中心に解析する。また、PI4,5P2のマーカーであるGFP-PH,PI3PのマーカーであるGFP-FYVEなどのプラスミドを駆使して、各種ノックアウト細胞における脂質の細胞内局在を可視化する。さらに同定した脂質制御因子群のノックアウト細胞および過剰発現細胞における細胞内イノシトールリン脂質のプロファイリングを行う。
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