2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J10712
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
佐々木 崇 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 特別研究員PD
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Keywords | ブドウ球菌 / 哺乳類 / 共進化 / 旧ローラシア大陸 / 旧ゴンドワナ大陸 / 分岐年代推定 / コアゲノム / 先祖多型 |
Research Abstract |
ブドウ球菌属は44種が分類されている。一部の種で宿主特異性を示すことが知らるが、大部分の種の生態は不明である。宿主特異性の観点から、皮膚常在菌ブドウ球菌は宿主と共進化関係をもつことが予想される。ブドウ球菌全種の進化生態学的特性を包括的に理解するため、本研究では、自然宿主と考えられる哺乳類の種を網羅的にサンプリングし、ブドウ球菌を分離培養した。 哺乳類宿主1565個体(143種、53科、16目)、鳥類196個体(3種、3科)、爬虫類89個体(1種、1科)からStaphylococcus属の種分布を解析し、S. aureus-groupと霊長類、S. delphini-groupとローラシア獣類がそれぞれ共進化関係をもつことを見出した。これらは旧ローラシア大陸で出現し種分化してきたことが示唆された。また、S. simulas-groupはゴンドワナ大陸で出現したクレードで、S. xylosus-groupとS. haemolyticus-groupは大陸移動によって南北に分断されたことが示唆された。これら3つのブドウ球菌groupと共進化関係を示す哺乳類の目は原生種には見られず、既に絶滅した哺乳類クレードとかつて共進化関係にあり、原生種に宿主転換したpopulationのみが現存していると考えられた。 本研究では分子時計による分岐年代推定を実施し、ブドウ球菌属の出現推定時期が哺乳類のそれと一致することを示す。ブドウ球菌属全種全ゲノム塩基配列を用いたゲノムワイドな分岐年代推定を実施するため、ゲノム配列が既出の種を除いた32種のブドウ球菌株のドラフト配列を平成23年度中に取得した。これらを用い、ブドウ球菌属コアゲノムを構成する遺伝子を同定し、さらにそのなかで水平伝播や祖先多型の影響を受けていない遺伝子群を特定する作業を、現在進行中である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ブドウ球菌属の生態学的データについて方々の多大な協力が得られたため、ブドウ球菌属の種分化と大陸移動との関連を新たに考察できるまでになった。 また、現在所属する国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターでは、細菌のde novoシーケンス解析におけるパイプラインが成熟しており、その手法と技術の翌得において極めて良い指導を受けることができた。三年かけて取得する予定であったブドウ球菌属全種全ゲノム配列についても既に初年度中に得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
分岐年代推定のためのブドウ球菌属全種全ゲノム配列が既に得られたことから、系統解析に時間を費やすことが可能となった。厳密な垂直伝播を成し遂げてきた遺伝子の選別に力を注ぎ、ブドウ球菌属分岐年代のベイズ推定を実施する予定である。 ブドウ球菌属の生態学的情報解析については、異節類およびアフリカ獣類のサンプル数が不足しているため、さらなるデータの蓄積を要する。動物園施設を中心に、フィールド調査を重ねる必要があり、今後も引き続き動物からブドウ球菌を分離培養していく。
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