2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中片麻痺のニューロリハビリテーションにおける生理学的機序の解明
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11J10759
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
田添 歳樹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所・運動機能系障害研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | リハビリテーション / 脳卒中 / 神経可塑性 / 大脳皮質一次運動野 / 運動制御 |
Research Abstract |
本研究は、脳卒中片麻痺患者のリハビリテーションの発展を目指し、片麻痺からの運動機能回復を効率的に促すための生理学的機序を明らかにすることを目的として遂行している。 今年度の研究では、初年度から一部実施している左右大脳運動野間の神経活動バランスに及ぼす経頭蓋直流電気刺激(tDcs)の有効性について詳細に検討した。その結果、tDcsによって左右大脳皮質運動野間の半球間抑制に変容を促すことが可能であること、陰極刺激と陽極刺激を左右の運動野にそれぞれ与えることにより効果的に半球間のバランスを変化させられる可能性があることを明らかにした。また、半球間抑制については運動遂行に伴ってどのように変動するかをより詳細に検討した結果、運動速度や運動の局面に強く影響を受けることが確認された。これらの成果は、組み合わせることによって脳卒中片麻痺後に均衡の崩れた左右大脳半球の活動を是正する上で効果的なトレーニングを考案するための有益な基礎的データになるものと考えられる。 また、本年度の研究では米国ピッツバーグ大学およびカーネギーメロン大学主催のワークショップ(MNTP workshop)に参加し、大脳の拡散テンソル画像の取得方法を学んだ。脳卒中片麻痺患者の研究において、拡散テンソル画像は皮質脊髄路や脳梁などの運動機能回復に深い関連のある神経系を器質的に評価するために有用である。したがって、これらの技術をこれまで遂行していた神経生理学的手法による左右大脳皮質問の半球化抑制の実験に応用することによって、より多角的なアプローチが可能になるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経頭蓋直流電気刺激の有用性について生理学的根拠となる知見が得られたことは、本年度の研究において定めた目的の1つを達せし得たものと思われる。脳卒中患者を対象とした実験が遅れていることが懸念ではあるが、拡散テンソル画像などのMRI装置を用いた新たな研究評価手法が利用可能となったことは研究の進展に寄与したものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、これまで健常成人で得られた半球間抑制に関する生理学的知見をもとに経頭蓋直流電気刺激、拡散テンソル画像などの研究手法を用いて、脳卒中片麻痺患者に対してどのような運動が効果的か検討する。また、運動トレーニング効果の検証を目的とするため、麻痺肢によって運動が可能な不完全麻痺患者を対象とするが、健常側の運動や両手運動のトレーニング効果についても検討するため、比較的重度な麻痺患者に適応可能な運動の検証も同時に試みる。
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Research Products
(4 results)