2012 Fiscal Year Annual Research Report
生きた動物個体内の特定の細胞でのみ機能を発揮する新規機能性生物発光プローブの開発
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11J10826
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小嶋 良輔 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生物発光 / luciferin / 光機能性分子 / Nanoluc |
Research Abstract |
生物発光は分析法における検出原理として広く用いられているが、見方を変えれば生体深部でも利用可能な光機能性分子の励起エネルギー源として使用できる可能性がある。私は昨年度までにAmino luciferinを基盤分子として用いて、この発光特性を維持したまま光機能性分子を結合する分子設計法を確立し、モデル分子として近赤外生物発光基質を世界で始めて開発することに成功し、またこの基質を生細胞や生きた動物個体内でも使用可能であることも示していた。本年度、それぞれの基質に関する更なる分光学的性質、luciferase基質としての精査を行った後に、これらの結果をまとめて論文を投稿した結果、化学のトップジャーナルであるAngew. Chem. Int. Ed.に受理され、またEditorらよって"HotPaper"に選出されるなど高い評価を得た。 また、本年度は、光機能性分子の励起光源としての可能性をさらに広げるため、新しいluciferaseを用いて、発光によって生じたエネルギーをより短波長の領域に吸収をもつ光機能性分子にも転送可能なシステムの開発を行った。これまで用いていたfireflyの生物発光のシステムにおける基質からの発光波長はおよそ550nmであったが、この領域に吸収波長を持つ光機能性分子はそれほど多くなく、その光機能性分子の励起エネルギー源としての利用可能性は限定されていた。そこで私はfirefly luciferaseに比べて100倍以上の発光量を示し、450nm程度の短波長発光を示すNanoluc(ACS Chem. Biol., 2012, 7, 1848-57)を利用し、ベンジルグアニン誘導体によって効率的にラベル化されるSNAP-tagと組み合わせることで、生細胞内で、比較的短波長(~500nm)に吸収を持つ光機能性分子へもエネルギーを転送することが可能なシステムの構築を試み、これに成功した。この結果により、これまでに報告されている様々な光機能性分子や、チャネルロドプシンなどの光機能性タンパク質にも、エネルギーを転送することが可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規機能性分子の設計法を確立し、実際にその有用性を示すin vivoで利用可能な近赤外生物発光基質の開発に成功し、Angew. Chem. Int. Ed.に論文として受理され、高く評価された。また、これまでより短波長の領域に吸収を持つ光機能性分子へのエネルギー転送を可能とする技術の確立にも本年成功しており、おおむね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今度、実際に他の光機能性分子を用いて、luciferase発現細胞選択的な細胞殺傷を可能とするシステムを構築したい。また、本研究の過程で、基質とluciferaseの細胞内局在を一致させることが、大きな発光を得る上で重要であることを発見しているので、これを利用して新たな機能性発光物質の開発に取り組みたいと考えている。
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