2011 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザーを駆使した細胞間接着機構とその生物学的機能の力学的解明
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11J10835
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
飯野 敬矩 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フェムト秒レーザー / 衝撃力 / 細胞計測・操作 / 接着力の定量評価 / 衝撃力のパルスエネルギー依存性 / キャビテーションバブル / 水の体積波 |
Research Abstract |
細胞間の接着力評価の摂動として利用しているフェムト秒レーザー誘起衝撃力をパルスエネルギーの関数として調べ、その制御性を明らかにした。衝撃力の定量評価は原子間力顕微鏡を利用して行った^<[1]>。その結果、衝撃力は発生のしきい値(E_<th>)からその2倍(2 x E_<th>)のエネルギー領域においてほぼ線形的に衝撃力強度が増加し、0.025pN-s以内の精度で制御可能であることを見いだした。我々が行った先行研究^<[2]>等で得た細胞間接着力と比較すると、この制御の精度は接着力のばらつきとよりも小さいものであり、本手法の有効性を示す結果が得られた。フェムト秒レーザーを駆使した本手法は、短時間に多数の細胞を扱える為(神経-マスト細胞の場合、約100samples/hrs)、細胞間のばらつきの影響を軽減して接着力を評価可能であると考えられるが、その実現には衝撃力の制御精度を明確に示すことが不可欠であった。衝撃力の制御精度を明らかにしたことで、神経-マスト細胞間の接着力の評価及び解析の信頼性を格段に向上させられたと考えている。 また、上述の評価研究では、フェムト秒レーザー誘起衝撃力の実体を物理学的に考察し、衝撃力の実体がキャビテーションバブルの生成によって生じる水の体積波であることを示唆する結果を得た。衝撃力の主な起源はフェムト秒レーザー集光後に発生する衝撃波とキャビテーションバブルであると考えられていたが、これらの寄与の実体については明らかになっていなかった。本実験により、フェムト秒レーザー衝撃力を利用したこの新規な方法論を構築する上での根底をなす物理的性質を明らかにできたといえる。このように本年度、衝撃力の物理的性質とその制御性を明確にできたことで、神経-マスト細胞間の接着における物理的相互作用を、より踏み込んで考察することが可能になったと考えている。 [1]T.Iino and Y.Hosokawa, Appl.Phys.Express, 3(2010) [2]Y.Hosokawa, M.Hagiyama, T.Iin6 et al, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 108(2011)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接着力評価の摂動に用いているフェムト秒レーザー誘起衝撃力の物理的性質及び制御性をより明確にし、接着力の適切な解析の実現を目的とし、衝撃力の評価研究に力点をおいたため、当初計画していた神経-マスト細胞間の接着力評価の実験に若干の遅れが生じている。しかしながら、株化された神経芽細胞腫(Neuro2a)を用いて、ばらつきが少なく、短時間で多くのデータが取得できる系の樹立に成功し、その接着力の大まかな時間変化はつかんでおり、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
Neuro2aの神経軸索とマスト細胞の接着力が、共培養を開始してから10から20時間で、その接着力強度が増加し、また個体ごとの接着力のばらつきが減少する傾向がみられており、データ点数をかせぎ、その変化をより明瞭にしていく。その後、接着分子を形質転換した系を用いて接着力変化を同様に調べ、それらの時間変化を説明する数理学的なモデルの構築を行う。さらに、接着分子(CADM1)を蛍光標識し、その挙動を調べ、構築した数理学的モデルと照合することで細胞レベルの接着における接着分子の効果(あるいは、その他の効果)を明らかにする。こうした知見に基づいて、細胞間の接着の分子的機構を考察する。研究の進行はやや遅れているものの、Neuro2aの使用により実験頻度は向上しており、進行の遅れが拡大する可能性は高くないと考えられる。従って、当初の研究計画の順に従って研究を遂行していく。
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Research Products
(11 results)