2011 Fiscal Year Annual Research Report
Fe-Si合金溶媒を用いたn型、p型SiC単結晶の革新的高速溶液成長法の物理化学
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11J10842
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川西 咲子 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シリコンカーバイド / 溶液成長 / リアルタイム観察 |
Research Abstract |
(1)FZ高速成長下でのSiCの成長速度に及ぼす因子の調査 新規に作製した二域独立加熱式結晶育成炉を用いてSiCのFZ高速成長時の支配因子の調査を試みた。原料基板(多結晶SiC)の温度を1360-1500℃、種結晶基板(6H-SiC(0001))の温度を1300-1450℃とし、厚み2.8mmのFe-36mol%Si合金を真空もしくはAr流通雰囲気中で1時間保持し溶液成長を促した。得られたSiC成長層の高さは外周部から中心に向け急激に増加した後、徐々に低下し、中心部では種結晶面と比べ同程度或いは数μm低いことを確認した。溶液中のSiC溶解度より、SiCが合金中に均質に溶解したと仮定すると、その量は最大で厚み40即程度であることから、SiCの溶解の後中心部では極低速にて成長したと推測される。また、一連の実験で得られた外周部での最大の成長速度は60-200μm/hであり、種結晶温度が同じ場合、原料温度が高いほど高速の成長であった。これに加え、溶液はC濃度が1mol%程度であることから、溶液中でのCの物質移動が律速段階であることが示唆された。 (2)SiC溶液成長時の成長界面リアルタイム観察に向けたアプローチ SiCがワイドギャップを有し可視光の透過性を示すことに着目し、種結晶背面を通して溶液成長時の成長界面をリアルタイムで観察することを考案した。本手法による成長界面の観察へ向けたアプローチとして、溶融合金へのSiC基板の溶解界面の観察を試みた。新規に作製した上部に観察窓を有するタンタル線加熱炉を用い、Fe-36mol%Si合金の上部に4H-SiC基板を配した試料を炉内に設置し、Ar雰囲気中で1500℃まで加熱し、SiC基板-溶液界面の観察を炉の上部のデジタルマイクロスコープにより行った。合金の溶解直後、SiCの六角錐状の局部溶解が開始し、基板に多くの窪みが形成することを確認した。1300℃での保持、その後の昇温過程では、面内方向のみのSiCの溶解、ステップバンチングの形成、界面平滑化の過程を確認した。また、1500℃までいずれの温度においてもSiC-溶液間の界面形態を明確に捉えることに世界で初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたFZ高速成長下でのSiCの成長速度に及ぼす因子の調査に加え、新たにSiC溶液成長時の成長界面のリアルタイム観察に向けた調査を開始した。既に1500℃までいずれの温度においてもSiC結晶背面を通してSiC基板-溶液界面の観察に成功している。このような1000℃を超える環境下での溶液成長時の界面観察は世界で初めての試みであり、これにより成長形態と欠陥・バンチングの関係性を明確化できる可能性がある。今後SiCの溶解過程ならびに成長過程を詳細に調査し、学会誌に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
・FZ高速成長下でのSiCの成長速度に及ぼす因子の詞査 これまでに、溶液中の対流が成長速度ならびに成長界面形状に大きく寄与することが示唆された。そこで今後、溶液中の強制対流がSiCの成長速度に及ぼす影響を調査する。そのために、種結晶や原料基板の回転下でSiCの溶液成長を試みる。 ・SiC溶液成長時の成長界面リアルタイム観察に向けたアプローチ 1500℃までの温度域にてSiC結晶背面を通したSiC基板-溶液界面の観察に世界で初めて成功している。そこで今後、高品質なSiC結晶の育成指針の確立に向け、種々の条件でSiCの溶解ならびに溶液成長過程を詳細に調査し、成長形態と欠陥・バンチングの関係性を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(2 results)