2012 Fiscal Year Annual Research Report
Fe-Si合金溶媒を用いたn型、p型SiC単結晶の革新的高速溶液成長法の物理化学
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11J10842
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川西 咲子 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シリコンカーバイド / 溶液成長 / リアルタイム観察 |
Research Abstract |
(1)FZ高速成長下でのSiCの成長速度に及ぼす因子の調査 昨年度の研究にてFe-Si合金を用いたSicのFZ溶液成長では溶液中の対流が成長速度ならびに成長界面形状に大きく寄与することが示唆された。そこで、溶液中の強制対流がSiCの成長速度に及ぼす影響を調査した。種結晶ならびに原料基板に±20rpmの回転を付与した上で、種結晶温度を1350℃、原料温度を1400~1500℃にて制御し、温度差法により種結晶基板上へのSiCの溶液成長を促した。昨年度実施した静置条件(成長速度20μm/h)に比べ、回転の付与により高速の成長(60-160μm/h)が得られており、温度勾配が大きく、炭素の過飽和度が大きいほど成長速度は増加した。また、成長面の温度が成長速度に及ぼす影響は小さかった。溶液成長速度が過飽和度に対して直線的に増加したことから、FZ環境にて基板に回転を付与した際のSiCの溶液成長において、溶液中の炭素の物質輸送が律速段階であることが明らかとなった。 (2)SiC-溶融合金間界面の高温リアルタイム観察 これまでに、SiCの広い可視光透過性に着目し、SiC結晶背面を通して溶液成長時の成長界面をリアルタイムで観察することを新たに考案し、1500℃までの温度域にて種結晶-溶液間界面が観察可能であることを明らかにした。しかし、観察像に見られるステップの高さは不明であり、成長速度の定量評価には至っていなかった。そこで、SiCウエハ上下面での光の反射により生じる干渉縞を利用した手法でのSiC-溶融合金間界面のナノオーダーのステップ高さの計測を行った。その結果、SiCの溶液成長に伴う高温界面形状の変化をリアルタイムで捉えることに成功し、界面における10nm以下の高さのステップを観察できることが明らかになった。さらに、1300℃における溶融合金へのSiCの溶解挙動を観察し、本溶解の律速段階が溶融合金中の炭素の物質移動であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた可視光域を利用したSiC-溶融合金間界面の高温リアルタイム観察に加え、SiCウエハ上下面での反射により生じる干渉縞を利用し、高温界面における高さの評価手法を考案した。同手法により、高温下における10nm以下の界面形状の評価に世界で初めて成功している。可視光を利用した界面観察と併せることにより、各成長様式における成長速度の定量評価が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
SiC溶液成長時の成長界面リアルタイム観察 高品質なSiC結晶の育成指針の確立に向け、溶液の流れの制御が可能な炉を新たに作製し、ステップフロー成長やスパイラル成長時の界面形態の調査を行う。溶液の流れと成長形態の関係性を明らかにし、定常的なステップフロー成長が得られる育成条件を得る。
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