2011 Fiscal Year Annual Research Report
ホウ素によるベンザイン反応の位置制御法 : 含ホウ素高機能性分子の創製
Project/Area Number |
11J10892
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
高木 晃 静岡県立大学, 薬学研究科, DC2
|
Keywords | ベンザイン / 位置選択性 / ホウ素 / ケイ素 / 計算化学 |
Research Abstract |
最新の理論計算化学(Gaussian09)を用い、ケイ素及びホウ素置換ベンザインの位置選択性発現機構のメカニズムを解明することを目的とした。まず、基底状態のベンザイン及び反応剤の電子状況を調べることにより、化合物が本来持つ電子的性質を調べた。しかし、基底状態の電子状態だけでは選択性発現の原因を完全に明らかにすることはできなかった。そこで次に、syn体、anti体それぞれを形成する遷移状態を計算することで、各遷移状態のエネルギーを求め、そのエネルギー差を算出し、選択性の理論値を求めた。この遷移状態の構造を見ることで、通常電子的な相互作用によって選択性が考えられるDiels-Alder反応であるが、ベンザインを用いた場合には電子的効果及び立体的効果の両者が選択性を決定しており、ケイ素置換ベンザインでは立体効果が非常に強く表れるのに対し、ホウ素置換ベンザインでは電子的効果も強く表れることがわかった。このように、ケイ素及びホウ素置換ベンザインの選択性の原理を計算化学を用いることでおおよそ理解することができた。 光学活性なジオールを用いることで、光学活性なホウ酸エステル部が置換したベンザインを発生させることができた。このベンザインと置換フランとのDiels-Alder反応を種々検討したところ、現時点ではジアステレオ選択性はほぼ1:1となった。一方で、光学活性な置換基を有するフランとの反応では、わずかながら選択性が発現した。 ホウ素置換ベンザインとアミン類との求核付加反応を検討中に、ホウ素上の置換基を変えることで2通りの位置異性体の作り分けができることが分かった。すなわち、1,8-ジアミノナフタレンが結合したホウ酸部を有するベンザイン前駆体に高極性溶媒(HMPA)を用いるとオルト位に選択的に、ピリジンを溶媒に用いた際にはメタ位に選択的に付加した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算化学を用いてケイ素・ホウ素置換ベンザインの反応位置選択性発現機構を解明する目標に対しては、学会発表を行い、論文も投稿準備中であることから達成できたといえる。ジアステレオ選択的なDiels-Alder反応は十分には到達しなかったが、ジアステレオ選択性が表れたので今後の課題として行う。求核付加では当初の手法とは異なったが、オルト・メタ位置異性体の作り分けが可能となったので、おおむね目標は達成できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
理論計算においては成果をすでに国内外の学会で発表しており、近日論文に投稿予定である。また、ジアステレオ選択的なDiels-Alder反応においてはホウ素上の置換基とフランの置換基の組み合わせ(double asymmetric induction)によってDiels-Alder反応における選択性の向上を検討する。ホウ素置換ベンザインへのアミン類の求核付加に関しては、この反応の一般性、並びに選択性逆転の機構を明らかにする。さらに、ホウ素置換基の正の誘起効果とホウ素の空軌道への配位の有無などによって、反応位置を制御し、両位置異性体の作り分けを行う研究を継続して行う。
|