2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11J10899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井手上 英司 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機合成 / 天然物合成 / アルカロイド |
Research Abstract |
ステモフォリンは、Stemona japonicaから単離構造決定されたステモナアルカロイドであり、本化合物および類縁体には殺虫作用や子宮収縮抑制作用、胃の悪性腫瘍細胞に対する細胞毒性など興味深い生物活性が多く存在する。また、低分子量ながら極めて特異で複雑な骨格を有しており合成化学的にも非常に興味深い化合物である。我々は、このような本化合物の効率的初の不斉全合成を達成すべく合成研究を行なっている。 本年度は研究計画に基づいて、L-アスパラギン酸を出発原料に選択し、βケトエステルの構築を行った後に活性メチレン部位のジアゾ化と続くNH挿入反応を行なうことで多置換ピロリジン環の構築を行った。そして、ピロリジン環の窒素原子の酸化を行ないニトロンへと導いた後、加熱をしたところ、鍵反応として設定していたニトロンの1,3-双極子環化付加反応が狙い通り進行することで、一挙に3環性骨格を立体特異的に構築することに成功した。さらに、N-O結合の解裂と環化反応を行なうことでステモフォリンが有する3環性骨格の構築を完了した。次に、3環性骨格からステモフォリンが有するかご状骨格へとみちびくために、極性転換を利用した炭素-炭素結合反応を試みたが、良い結果を与えなかった。そこで種々検討を行った結果、スルホキシドのアニオン環化反応によって炭素-炭素結合反応が行なえることを見いだした。続いて、アニオン反応の際に必要となったスルホキシド基をプンメラー反応によってケトンへと変換することで当初予定していた、高度に縮環した合成中間体へと導いた。現在は、この中間体からの更なる変換を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書通りニトロンの1,3-双極子環化付加反応を用いることで3-環性骨格を効率的に合成することに成功し、さらに、当初の予定とは違うがスルホキシドのアニオン環化反応を行なうことでステモフォリンが有する縮環骨格の構築を達成したから。
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Strategy for Future Research Activity |
ステモフォリンが有する縮環骨格の構築を完了したため、次に共役するブテノリド骨格の構築を行なう。ここで、二重結合の立体制御に困難が予想されるが、一度モデル化合物を用いて選択的に合成する手法を確立した上で、実際の基質に適用して、全合成を達成する。
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