2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病予防効果を及ぼすオメガ3系多価不飽和脂肪酸活性化ペプチドの探索と機能
Project/Area Number |
11J10925
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
川島 祐介 北里大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | オメガ3系多価不飽和脂肪酸 / 糖尿病 / fat-1マウス |
Research Abstract |
本研究では、魚油に豊富に含まれるオメガ3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3PUFA)の糖尿病予防効果を検証し、その効果をプロテオミクス・ペプチドミクスの手法を用いて解明することを目的としている。この研究を行うにあたり、オメガ3PUFAの効果のみを適切に評価するために、線虫のオメガ3PUFA合成酵素fat-1をトランスジェニックし、生体内に豊富にオメガ3PUFAが存在するマウス(fat-1マウス)を使用している。平成23年度においては、オメガ3PUFAによる糖尿病予防効果の検証するために、fat-1マウスと野生型(wt)マウスを高脂肪食下で飼育し、肥満を発症させ、ヒトの40~50歳にあたる50週齢のfat-1マウスとwtマウスをそれぞれグルコース負荷試験を行った。その結果、fat-1マウス、wtマウス共に糖尿病を発症しており、グルコース負荷試験の検査値も有意差は得られなかった。ただし、糖尿病によってリスクが上昇する肝癌の発症においては、wtマウスでは24匹中4匹、fat-1マウスでは24匹中0匹と肝癌の発症は優位に抑えることが確認できた。現在、糖尿病予防効果の検証については、病態が進行しきった50週齢より若い30週齢のマウスを用いて、再度、グルコース負荷試験を行う準備をしている。また、オメガ3PUFAによって変動するタンパク質・ペプチドから、糖尿病予防関連因子を探索するために、正常なfat-1マウスとwtマウスのプロテオーム解析を行った。その結果、血清、肝臓、脂肪組織からオメガ-3PUFAによって変動する20以上のタンパク質を検出することに成功した。この中には、糖尿病と関連性のある脂肪肝を抑制するタンパク質も含まれており、オメガ3PUFAの糖尿病予防効果の重要な因子と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オメガ3PUFAによる糖尿病予防効果の検証において高脂肪食下の長期飼育では糖尿病予防が確認されなかったが、糖尿病によってリスクが上昇する肝癌は抑えることの確認はできた。また、糖尿病予防効果を再検証するための、糖尿病の病態が進行しきらない若いマウス(30週齢)の準備もほぼできている。糖尿病予防関連因子については、正常なfat-1マウスとwtマウスのプロテオーム解析を通して同定することに成功している。これらの点からおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに発見しているオメガ3PUFAの糖尿病予防関連因子については、オメガ3PUFAの血中濃度ならびに糖尿病の病態との相関解析をして糖尿病予防効果を検証する。また、さらに網羅性の高いプロテオミクス・ペプチドミクス手法を用いて、様々な体液・組織からオメガ3PUFAの糖尿病予防関連因子の同定を行っていく予定である。
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