2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J10930
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 大介 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | パッチクランプ記録 / 海馬 / 報酬 / オペラント学習 |
Research Abstract |
私は、in toto海馬標本を用いて、海馬ニューロン間のシナプス結合における、「自発的可塑性のルールの抽出」を目的として研究を行ってきた。自発的可塑性を生じるための条件を模索していく過程で、「可塑性の誘導されやすい脳の状態」と「可塑性の誘導されにくい状態」があるのではないかと考えた。しかし、脳の状態を表す「脳波」が別の脳波にスイッチするメカニズムは明らかでない。そこで、脳波の発生およびスイッチするメカニズムの検討を行った。本目的のためには、脳波の状態が自発的にスイッチするin vitroの実験系が望まれるが、それを達成させる既存の実験モデルはなかった。そのため修士課程までに私は、従来in vivoでしか観察されなかったシータ波やガンマ波、リップル波といった脳波をin vitroで再現できる、「in toto海馬標本」という実験モデルを確立した。 脳波は、特定の興奮性および抑制性ニューロンの発火タイミングが同期することで生じる波である。従来の脳波研究は、発火タイミングだけに着目した研究がほとんどであった。しかし私は新たな視点として、そこにパッチクランプ法を適用することにより、発火応答のみならず、「どのような興奮性および抑制性の神経入力バランスに起因して脳波が表出しているのか」という点から明らかにしようと考えた。そこで、興奮性入力と抑制性入力とを個別に切り分けて記録し、脳波のスイッチ時のそれらのバランスに着目して検討を行った。その結果、シータ波、ガンマ波、または脳波の生じていない状態間のスイッチ前後で、興奮性の入力強度に有意な差異が認められないのに対し、抑制性の入力強度には有意な差異が認められた。すなわち、脳波の発生していなかった状態からシータ波が発生する際には抑制性入力強度が減弱し、ガンマ波に移行する際には増強され、その逆も同様であった。このことは、抑制性の入力強度によって脳波の発生および状態が制御されていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画的に進んでおり、目標であった技術の習得とそれを用いたパイロット実験が進行中であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
私は、生体動物で脳波がどのような神経入力バランスにより表出しているのかを検討するために、さらに難易度の高い手技を習得し、新たな実験モデルを構築しようと試みている。すなわち、in vivo海馬からの記録である。これにより、in toto海馬で得られた結果をサポートしようと考えた。最終的には、in vivoで自発的可塑性を検討しようと考えているため、まず難易度の高いin vivoパッチクランプ法を習得中である。そして、脳波記録と併用することで、脳波の発生およびスイッチ時の神経活動を記録している。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] 単離海馬におけるシータ波2011
Author(s)
Ishikawa, D., Matsuki N., Ikegaya, Y.
Organizer
第11回東京大学生命科学シンポジウム
Place of Presentation
東京東京大学
Year and Date
2011-06-04