2012 Fiscal Year Annual Research Report
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11J10930
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 大介 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | パッチクランプ記録 / 海馬 / 報酬 / オペラント学習 |
Research Abstract |
私は、当初のテーマであった「自発的可塑性の誘発ルール」が生体動物の神経回路でいつ、どのようにして生じるかを検証している。昨年度には、可塑性の生じやすい脳状態と生じにくい脳状態があり、異なる神経基盤が存在することを見出した。学習は、より良い成績を出せるよう、脳の神経基盤を可塑的に適応させていくプロセスである。先行研究において、特定の行動と報酬との連合性を学習させることで、「行動」を制御する学習パラダイムが確立されてきた。特定の行動は特定の「神経基盤」から引き起こされる。そこで、行動成績を強化するために、可塑性が生じやすい脳状態に神経基盤を制御させることができないかと考えた。しかし、これまでの研究で、非選択的に神経基盤を制御することはできても、それぞれの行動に対応した特定の神経基盤、すなわち特定の「シナプス活動」が選択的に制御されるかどうかを示した研究はない。そこで、「シナプス活動の自己制御法」の確立を行ってきた。 脳シナプス活動を自己制御するための実験系として、「ニューラルオペラント条件付け」と呼ばれる、特定のシナプス活動と報酬との連合性を獲得させる系を構築した。本実験系を用い、特に学習の固定化のプロセスに重要な「リップル波」に着目し、まずリップル波の発生頻度を「上方制御」できるかどうかを検証した。その結果、マウスはリップル波と報酬との連合性を効率的に学習し、リップル波の発生頻度を増加させることができることを見出した。現在リップル波の消失に対して報酬を与える予備試験で、リップル波の発生頻度を「下方制御」できることを見出している。また、特定の記憶の処理に関わるリップル波関連シナプス活動の自己制御が、行動に与える影響を検証中である。これにより、脳内の特定の神経基盤を動物がコントロールできる可能性を示唆するとともに、ミクロな神経基盤の変化により行動が調節される可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現段階で、三年目の段階まで進んでおり、論文を準備中であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の研究計画にあったミクロな神経回路での可塑性だけでなく、それに付随したマクロな行動レベルの変化も観察することで、ミクロな変化がどのようにマクロな影響を及ぼすかを検討していく予定である。
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Research Products
(6 results)