2012 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症の発症メカニズムの解明と言語学習支援システムの構築
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11J10946
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
明地 洋典 東京電機大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自閉症 / 顔情報処理 / 語彙学習 |
Research Abstract |
平成24年度は、自閉症スペクトラム障害(ASD; autism spectrum disorder)児に対して有効な語彙学習方略を同定するため、一場面では学習成立のための確定的な手がかりがなく、通状況的に証拠を蓄積することが必要な「通状況的語彙学習」について検討を行った。我々の過去の研究により、この通状況的語彙学習は、ASD児においても有効であるという結果が得られているが、視覚刺激が機械的なものであったために得意であった可能性が考えられた。そこで、視覚刺激として人間の顔を用い、ASD児の顔の記憶の困難さについて検討を行った。結果、定型発達児に比べ、ASD児は、顔と名前の関連を、通状況的に学習するのが困難であることが示された。また、顔の識別や短期記憶に関する課題では群間で差が見られなかった。これらの結果は、ASD児が人の顔と名前を覚えるのが困難であるのは、単に人の顔を識別できないからではなく、繰り返し出会う人の顔を記憶に蓄積することが難しいからである可能性を示している。 これまで、新生児が顔状刺激への選好を示すことが報告されており、これが後の社会性の発達に重要であるとされている。平成23年度は、顔らしさの基準は、ASD者と定型発達者で共通であることを明らかにした。また、顔、顔状物体、モノを刺激として呈示し、脳波計測を行った結果、顔に選択的に反応する脳波成分であるN170が顔状刺激に対しても振幅が増大することが確認されたが、ASD者においては、そのような顔状刺激に対するN170の振幅の増大が見られないことを示した。平成24年度は、ASD者と定型発達者を対象に、顔状物体とモノを呈示し、顔らしさと丸さをそれぞれ判断しているときの事象関連電位について検討を行った。その結果、ASD者においても、N170振幅は顔状物体に対してモノよりも大きいことが確認された。しかし、定型発達者では、顔らしさ判断時に丸さ判断時に比べてNl70が増大するのに対し、ASD者ではそのような判断の効果は見られず、トップダウンの処理に差があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自閉症スペクトラム児に有効な語彙学習方略の同定、顔状刺激への反応についてのデータ収集が順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、自閉症スペクトラムの早期発見および療育のための基礎研究を行いつつ、教示やトレーニングなどの効果検討も合わせて行う予定である。
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Research Products
(5 results)