2012 Fiscal Year Annual Research Report
未成年期に被災した阪神淡路大震災被災者の睡眠健康についての疫学的研究
Project/Area Number |
11J10971
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
和田 快 高知大学, 総合人間自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | PTSD / 阪神淡路大震災 / 朝型夜型度 / 精神衛生 / 睡眠健康 / メラトニン / 介入研究 / 疫学 |
Research Abstract |
第二年度は、第一年度の調査の結果に基づき、阪神・淡路大震災被災者を対象に、生活改善を目的としたリーフレットを作成し、そのリーフレットを用いた3週間に渡る介入フィールド実験を実施した。 第一年度において、兵庫県内の大学生275名(男性93名、女性173名、不明9名)を対象に行った質問紙調査の結果、改定出来事インパクト尺度の得点(以下IES-R得点)が高い者、すなわち、心的外傷度の高い者は低い者よりも有意に睡眠の質(Monroeの睡眠の質、主観的睡眠の質)が悪いことが示された。 また、朝型であるほど睡眠の質がよくなるという相関関係が見られ、朝型の生活をすることは質の良い睡眠の獲得に効果的であり、そのことを通じて心的外傷度の軽減に役立ちうることが示された。 そこで、生活改善を目的としたリーフレット『「早ね、早起き、朝ごはん」3つのお得一被災者の皆さんへのメッセージー』を作成(和田担当、原田哲夫・黒田裕子監修)し、睡眠日誌と共に研究協力者に配布、生活改善介入フィールド実験を実施した。実験は事前質問紙調査、3週間に渡る睡眠日誌自記取組、事後質問紙調査で構成された。 睡眠日誌へは1日の体調、就寝時刻、起床時刻、寝起きの気分、中途覚醒の有無及び回数と、既出リーフレットの内容に沿った5つの取組(1.早朝の太陽光曝露、2.朝食でのタンパク質摂取、3.朝食後の太陽光曝露、4.夜間テレビ視聴の制限、5.夜間の白色光非曝露)の実施状況の21日間毎日自記を依頼した。 特定非営利活動法人阪神高齢者・障害者支援ネットワーク理事長の黒田裕子氏の協力のもと、6月、10月、11月において計151名(うち、未成年期に被災した方は96名)の方に研究に協力していただいた。未成年期被災者の結果については現在解析中である。高齢者を対象とした同様の調査では、IES-R得点が取組前から取組後にかけて有意に低くなり(P=0.002)、取組効果が示された(黒田ら、2013)。本結果は原著論文として雑誌に投稿中と共に、2013年10月出版予定の著書「最新臨床睡眠学」中に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の2つ目、3つ目の目的「1年目の疫学研究の結果を基礎とし、被災者の生活リズムと睡眠習慣を改善させる方策を提案すること」「その方策の効果を介入フィールド実験により検証すること」に関して、生活改善リーフレットを作成し、介入フィールド実験を実施するにいたった。また、第27回国際時間生物学会議(Delhi, INDIA October 3-7, 2012)に於いて、被災者の実態調査結果を公表し、関連論文4報が雑誌に掲載され、著書(分担共著執筆)2件が出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は第二年度の結果を日本生理人類学会第68回大会、日本睡眠学会第38回定期学術集会、ヨーロッパ時間生物学会(EBRS2013)等で発表し、学会発表の内容を当該分野雑誌に投稿予定である。また、第二年度は特定非営利活動法人阪神高齢者・障害者支援ネットワーク理事長の黒田裕子氏との間で、東日本大震災被災者の健康増進の為の基礎・介入研究の実行の可能性について協議した。被災地で何らかの調査を行うには、被災者との絶対的信頼関係や倫理的配慮が大変重要となる。そこである程度の期間現地に滞在し、現地の研究協力者を御願する予定の方々との信頼関係を築いた上で、基礎的な実態把握調査の実施を行い、更に検証済みのリーフレットを用いた介入研究の可能性を探って行く予定である。
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