2011 Fiscal Year Annual Research Report
機能性RNAによる薬剤耐性黄色ブドウ球菌MRSAの病原性制御機構の解明
Project/Area Number |
11J11061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
幾尾 真理子 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | MRSA / CA-MRSA / 病原性 / 感染症 / 機能性RNA / psm-mec |
Research Abstract |
高い病原性と薬剤耐性を併せ持つ市中感染型薬剤耐性黄色ブドウ球菌CA-MRSA(Community acquired Methicillin resistant Staphylococcus aureus)感染症は臨床上重大な問題である。薬剤耐性獲得のため、CA-MRSA感染症は従来の抗生物質による治療では解決できない。このためCA-MRSAの高病原性発現機構の理解に基づく新規薬物開発は喫緊の課題である。 本研究の目的は、CA-MRSAの高病原性発現機構の理解、特にCA-MRSAの高病原性の原因である高毒素発現をもたらす新規機能性RNA psm-mec (Kaito C, Saito Y, Nagano G, Ikuo M et. al. 2011, PLos Pathog)が、どのようにして毒素の発現量を制御するかについて明らかにすることであった。このため1)psm-mec RNAが発現を制御する因子を探索してこの中から毒素発現制御に関わる因子を選択し、2)psm-mec RNAが直接作用する標的因子を同定し、3)標的因子との結合に寄与するpsm-mec RNAおよび標的因子の構造を明らかにすることを計画した。本研究では1)網羅的解析によりpsm-mec RNAが発現を制御する因子を同定した。2)さらに毒素を含むこれら因子の発現を制御する因子のmRNAが、psm-mec RNAと結合して翻訳抑制を受けることを明らかにした。3)また、この標的因子mRNAおよびpsm-mec RNAの結合に必要な配列を決定できた。 CA-MRSAが高病原性となる原因とその機構を明らかにしたこれらの結果は、CA-MRSA感染症の克服につながる重要なものであるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
psm-mec RNAとの結合アッセイを行うin vitro系と標的因子の発現量を見るためのin vivo系を構築することにより、機能性RNA psm-mecの標的因子を同定できた。来年度に予定していた結果を既に得ており、この結果は当初の予定よりも遥かに進んでいる。また今回構築したこれら実験系は、psm-mec RNAが機能する分子機構を明らかにする重要な手段・手がかりとなるため、CA-MRSAの高病原性に寄与する機能性RNA psm-mecのさらなる理解に向けて大きく進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
CA-MRSAの高病原性に寄与する機能性RNA psm-mecの病原性発現機構を分子レベルで理解するため、psm-mec RNAがどのようにして標的RNAの翻訳を抑制するか明らかにする。 psm-mec RNA結合因子の精製や遺伝学的解析を用いて、psm-mec RNAが標的因子の発現を制御するために必要な因子を同定する予定である。in vitroにおけるpsm-mec RNAの標的RNA翻訳抑制系の再構築が、最終目標である。
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